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第427話 『ケンセー』

 全員をチェックした?

 全員……?


 いや違う、ちょっと待て。

 全員じゃあない!


 だって2年S組でチェックした中に、俺とケンセーは含まれていないのだから――!


 そもそもの話として、俺が偽チートでないのは明らかだ。

 俺が俺である証明なんてできないけれど、俺が俺である以上、俺が偽チートでないことを証明する必要はないだろう。


 つまり――、


 気づきを悟られないように、なるべく自然な風を装いながら、俺はケンセーを見やった。


「? どうしたのセーヤくん? 私の顔に何かついてる?」

「あ、いや……その、ケンセー可愛いなって思っただけだ」


「うっ……もう、セーヤくんのばか……」


 そう言って顔を赤くしながらはにかんだケンセーは、それはもう可愛くて可愛くてお持ち帰りしたくなるくらいに可愛かった。


 しかし――。


 内向きにオシャレにカールしたゆるふわのモテかわ茶髪。

 大きくてくりくりしたちょっとタレ目が印象的なファニーフェイス。

 でもそれらは、黒髪クールな大和撫子っていう俺のイメージしていた『剣聖』とは大きくかけ離れているもので。


 幼馴染でおせっかい焼きな性格は無償の愛って感じがして、俺はすごく嬉しかったし少なからず好意ももった。

 だからケンセーが俺を立ててくれるように、俺もケンセーの意見や考えをちゃんと尊重しようとも思ったんだ。


 お互いが手を取りあい、譲り合って助け合って進んでいく――それは心がふんわりと温かくなる素敵にすぎる体験だった。


 でもそれは裏を返せば、ケンセーが巧妙に俺を尻に敷いて俺の行動を上手くコントロールしていたとも言える。

 振り返ってみればケンセーにあれこれ言われて、確かにそういう考え方もあるよなって、ケンセーの望むように行動させられていた気がしなくもない。


 そしてケンセーの戦闘系最強S級チート『剣聖』とは到底思えないへっぽこさだ。

 とにかく球技は全部だめ。

 走ったりジャンプしたりと言った基本的な運動もぶっちゃけ並以下――どころか下から数えたほうが早いだろう。


 俺は最強S級チート『剣聖』と死線を潜り抜けてきたからわかるんだ。

 『剣聖』は決してこんなへなちょこな性能じゃないってことを。


 なによりあの可愛くてピンク色の、守ってあげたい・なんでも聞いちゃいたくなるよオーラはなんだ?


『アレはそんなすごいもんじゃないよ。ほんのちょっとだけ認識に干渉して誘導しただけ』

 ケンセーが正体をばらしたときに確かこんなことを言っていた。


 その後も、なんとなくケンセーの言ってることを深く考えずにそうかなって思ってしまうことがあった。

 相手の精神や認識に干渉するようなこんな能力が、戦闘特化した戦闘系最強のS級チートたる『剣聖』の能力であるはずがない。


 整理しよう。

 つまりこういうことだ。


 2年S組のリストは全員シロだった。

 そしてそこに載っていないケンセー。

 俺の持つ『剣聖』のイメージとはかけ離れた可愛さに振りきった容姿。

 ベースが最強S級チートとは思えないへっぽこでへなちょこな運動能力。

 なにより『剣聖』らしからぬチート能力。


 ……これはもう間違いないと断言できる。


 ケンセーが、ケンセーこそが探していた偽チートだ!


 だが確信を得たものの、今ここでそれをあっさり簡単に指摘するわけにはいかなかった。

 なぜなら俺が持っているのはすべて状況証拠に過ぎないからだ。


 これだけだと上手いこと誤魔化される可能性が高い。

 絶対に誤魔化しのきかない状況で、一発勝負でケンセーの嘘を暴かなければならない――!

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