第426話 エッチ、スケッチ、ワンタッチ
「――というわけだったのさ。以上、報告は終わりだ」
ラッキースケベちゃんとのデートが、終始そんな感じの嬉し恥ずかしのハプニングで満載だったことを、俺はケンセーに今日一日の調査として包み隠さず正直に報告していた。
ふふん、正直者には福が来るからね。
いつでもどこでも正直過ぎる漢・麻奈志漏誠也であるからして。
――だって言うのに、
「もう! セーヤくんの女たらし! エッチ、スケッチ、ワンタッチ! 不潔! エッチ・ツー・オー!」
ケンセーったらめっちゃプリプリするんだよ。
っていうかエッチ、スケッチ、ワンタッチって死語とか小学生以来で懐かしすぎなんだけど。
しかもケンセーってばよほど怒り心頭なのか、プリプリしながら同時にゲシゲシと俺のすねを蹴ってくるのだ。
まぁゲシゲシって言うよりかは、ぴこぴことか、ぱこぱことか、ぺこぺこって感じで、やっぱりへなちょこノーパワーではあるんだけれど。
相変わらず攻撃力が皆無なんだよなぁ(苦笑
「っていうかH2Oって水の分子式だろ……?」
水は水素原子2つと酸素原子1つでできてるよって意味だ。
いくら俺が文系だからって、中学理科くらいは分かるんだからな?
「さてはケンセーめ、語感重視のノリで言ったな?」
「違うし! セーヤくんは流れる水のごとくナチュラルにエロエロだって言ったんだし! ふん!」
「あ、はい、すみませんでした……」
麻奈志漏誠也、秒で論破されてしまいました。
よし、ここは戦略的撤退だ。
話を変えよう。
「まぁそれはそれとして?」
俺はケンセーのきっついツッコミ&ぽてぽてキックから割とあっさり逃れると、
「でもこれってどういうことなんだ? 2回目の全チートっ子モニタリングも全員シロだったんだけど」
当然導き出さざるを得ないその結論を口にした。
「うん、そういうことになっちゃうね……」
それを聞いたケンセーがしょぼーんと、段ボール箱に捨て置かれた生まれたての子犬みたいな顔をした。
可愛いなぁもう。
思わず守ってあげたくなるよ。
だけど今は事実&証拠で、失敗を検証するのが最優先だ。
「今度こそはとアリの這い出る隙間もないってくらいに厳重に精査して見極めたんだ。なのになんでどのチートっ子が偽チートなのか分からなかったんだ? 何回も確認して悪いんだけどさ、大前提の容疑チートっ子が2年S組にいるってのは間違いないんだよな?」
「むぅ、それは間違いないよ、絶対だよ。天地神明に誓ってうちのクラスの誰かが原因だもん」
そこだけは絶対に譲れないと強気のケンセー。
こんだけはっきり断言するってことはそうなんだろう。
「でもなぁ……2回総当たりして成果ゼロだったからなぁ……これからどうすっかなぁ……」
こういう結果になってしまった以上は、やり方を変えないといけないだろう。
2回の全チートっ子モニタリングで時間もかなり費やしてしまった。
俺とチートたちが混じったことは、ただちに影響はない=いつ影響が出るか分からない以上、この意識世界から抜け出すのは早いに越したことはないわけで。
ただ何をどうすればいいか、その方法が思い浮かばないのも事実なのだった。
「うーん、他に手段がない以上もう一回クラスの全チートを総当たりするしかないのか……? でも今回は見落としがないように徹底してやったからなぁ……」
仮に3度目の正直でもう一度同じようにやったとして、果たして期待した結果を得られるのかは、はなはだ疑問だ。
そもそも、これ以上何をどう調査すればいいんだって話でもあるし。
それくらい今回はシビアに妥協なしでチェックしたのだから。
「くっそー……」
俺とケンセーを除いたクラス全員を、これだけ丁寧かつ厳重にチェックしたってのに、なんで犯人が分から――うん?
そこまで考えたところで、ふと引っかかるものがあった。