第418話 ミロノヴィーナスちゃん、一生ついていきます!
「可愛く描いてね、セーヤくん」
ミロノヴィーナスちゃんがにっこり微笑みながら言った。
今、彼女は俺の部屋で俺のベッドに腰かけている。
「俺の」はどちらか一回で十分だ、とかそういう指摘は無粋なので止めて欲しい。
敢えて表現を重ねることで、俺の緊張っぷりとこの神すぎる状況を強調しているのであるからして!
というのも今日はケンセーは一緒じゃないので、狭い俺の部屋に俺とミロノヴィーナスちゃんが二人きりというシチュエーションなのだから……!
チート学園制服の短いスカートから伸びるすらりと長いカモシカのようなすべすべ生足が、実に目にまぶしい……視線が引き付けられる……ご、ごくり。
「セーヤくん?」
「はっ!? いやいやなんでもないよ!?」
いかんいかん、今は素敵なおみ足に見とれて「もうちょっとでパンツが見えるのでは……!」とか考えている場合じゃないんだ。
俺にはモニタリング最後の一人であるミロノヴィーナスちゃんが、ニセチートであることを見抜くという崇高なミッションが課されているのだから……!
「うーん頑張るけど、可愛くというか上手く描けるかは自信がない……ぶっちゃけあまり絵は得意じゃないからさ」
高校の時、美術の筆記試験は毎回ほとんど満点だった。
しかし評価は5段階で常に真ん中の3だった。
つまりは実技が限りなくだめだめだったというわけだ。
しかしミロノヴィーナスちゃんときたら、
「ふふっ、こういうのは上手とか下手じゃないの。セーヤくん一生懸命描いてくれるかどうかが大切なんだから」
なんてことを微笑みながら言うのである、言うのである!
あ、これ、童貞男子は100%オチるね。
信奉者になっちゃうね。
童貞の俺が言うんだから間違いないよ。
ミロノヴィーナスちゃん、一生ついていきます!
「オッケー、そういうことなら全力で描くって約束するよ」
「うん、セーヤくんの全力、楽しみにしてるね。じゃあすぐに脱ぐから――」
「おう――って、はいぃぃぃぃぃっ!?」
いきなり脱ぎだしたミロノヴィーナスちゃんを見て俺が突拍子もない声を上げたのは仕方のないことだろう。
「セーヤくん、なんでそんなに驚いてるの?」
「いや驚くでしょ! いきなり脱ぎだされたら!?」
すでに夏服のブラウスのボタンは半ばまで外され、可愛いピンクのブラがこんにちはしてしまっている……!
服の上からでも存在感を放っていた圧倒的なおっぱいは、当たり前だけど脱いでもスゴかった!
「人物画と言えばヌードデッサンだもんね。ありのまま、恥ずかしいけど私も頑張るから」
言いながらブラウスを脱ぐと、次にスカート、靴下、ブラを外し、生まれたままのありのままの姿へと近づいていくミロノヴィーナスちゃん。
「いやいや今回はヌードデッサンじゃないんだ、極めて健全な――」
そう言いかけて俺は止まった。
同級生でアイドル顔負けの美少女の全裸を、自分の部屋という最強のホームグラウンドで合法的に舐めるように観察できるぜ! ひゃっはー!! 俺の人生が最高すぎる件に関して!! はやく全裸になーれ! むしろ俺も全裸になる! あなたと合体したい!
――などと思ったわけではなかった。
いや思わなくはなかったんだけど、それが理由ではなかった。
というのも、
「すごくきれいだ……」
俺はアホみたいにぽかんと口を開けて見惚れてしまっていた。
ミロノヴィーナスちゃんの一糸まとわぬ裸体にくぎ付けになっていた。
まるで芸術作品のような抜群のプロポーション。
思わず触りたくなる瑞々しい乙女の柔肌。
惹きつけてやまないアルカイックスマイル。
そっと髪をかき上げる――そんな仕草だけで、俺の胸がドキンと強く高鳴るのだ!
もうこの時点で俺は強く強く確信していた。
間違いない、ミロノヴィーナスちゃんはモデル系S級チート『ミロのヴィーナス』であるということを――。