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第408話 お前、誰だ――!

「お前さ、もしかしなくても俺のこと好きだろ?」

「……はい?」


 ズバリ確信をついた俺の結論――それを聞いたケンセーはしかし、大きく首を傾げた。


「おいおい、そんな下手な芝居をして隠さなくてもいいってば。俺にはもう全部わかっているんだから。俺とお前の仲だろ?」

 なんて言ったって俺とケンセーは、幼馴染で従兄妹で同居している間柄だからな。


「あの、セーヤくんはいったい何を言ってるの?」


「ん? なんだなんだ? ここまできて隠すってのか?」

「いや隠すもなにも――」


 ああそうか、どうやらこれはいざ気持ちを伝えるとなると、やっぱり恥ずかしさが込み上げてきて勇気が出なくなっちゃった……的な気持ちと見た!

 ふふん、まったく可愛い奴だなぁ、もう。


「だってそうだろ? 家でも学校でもやたら俺と一緒にいたがるし。急に服装を整えては真面目な顔をして、それで変な質問をしたり、なにか言おうとして途中でやめたりするし……もういかにもって感じだよな。つまりこれらの行動を総合的に勘案するとだ!」


「す、すると……!?」


「お前が俺のことを好きなのは確定的に明らかだってことだ……!」

「えええぇぇぇっっ!!??」


「ケンセーは俺に告白しようとして、でもいざしようとするとなかなかできなかった! 今も気持ちを伝えようとしたけど、やっぱり勇気が出ないよ……こんなに好きなのに……」

 最後のあたり、俺はケンセーの声まねをしながら超どや顔でそう言った。


「な、なぜにそうなる!?」


「なぜって、一緒にいたいのは俺のことが好きだからだろう? 身だしなみを整えるのも一番可愛い自分を見せたいからだ。変な質問も興味を引こうとしてるんだろうし、何か言おうとしてやめるのはきっと告白しようとして勇気が出ないと見た。どうだ!」


 俺の披露した完璧すぎる名推理に、


「せ、セーヤくん……」

 ケンセーは言葉も出ないようだった。


「いやー、気付いてない振りをしようと思ったんだけどさ? でもこうやって何度も何度も繰り返しアプローチしてくるってことは、ケンセーは自分の気持ち、つまり恋心を俺に気付いてほしかったんだよな。まったくもう、いじらしいやつだなぁ!」


 ま、俺ほどになれば見ればわかるっていうか?


「せ、セーヤくんはアホだと思ってたけど、まさかここまで真正のアホだったなんて……アンビリーバボー……もうこれ話がまったく進まないよ……予定とは全く違うけど、もう仕方ないかな……」


「ん? 何の話だ?」

「はぁ……ねぇセーヤくん、私の目を見て――」


「目を見ろって、いいけど、それがなにか? 気になる俺と見つめ合いたいってこと――――はっ!?」


 その瞬間、俺の頭の中に突風が吹いたかと思うと、思考が一気にクリアでクリーンになった。

 ずっと頭の中にあった何とも言えないもどかしさが、確固たる記憶としてよみがえったのだ――!


 そんな俺を見てため息をついた少女は――、


「おい、お前、誰だ――!」

 ――それは従兄妹でも幼馴染でもない、まったく知らない女の子だったのだ――!


 そもそもの話として、天涯孤独で異世界転生した俺には、転生の前も後も身内なんているはずがないのだから……!


 洗脳? いや催眠術か?

 なんにせよ、この女の子――ケンセーが俺を騙してたってことには変わりはない……!


「なんのつもりだケンセー……えっとケンセーで、いいんだよな?」

 敵意もあらわに(すご)もうとして――でもケンセーの可愛さの前に速攻でヘタレた俺に対して、


「はぁ、やっとだよ……」

 ケンセーはがっくりとうなだれたのだった。

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