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第403話 はじまり

「――ん――きて――ヤくん――きて」

「むにゃ……ん……? ふぁ……あと5分……」


 耳元で誰かがささやく声がして――しかし俺は気持ちよく寝ておりますので……ぐぅ……。


「セーヤくんセーヤくん、起きてってば。学校遅刻しちゃうよ?」

「学校……? ってなんだっけ……」


 ああ、あれか、学生が行くやつか……


「うん、俺には関係ないな……ぐぅ……」

 無関係だと判明したことで、俺の意識は再び眠りの沼へと沈んでゆく――。


「ちょっと、セーヤくんには関係あるってば!? 起きてよほら、ねぇ起きて――って、いい加減に起きろやこのねぼすけセーヤくん!」

 直後、俺の腹の上にドスンと何かが落下した。


「ごふぅ――ッ!? いきなりなにしやがる……、ぐっ、重い……」

「ふぇっ!? お、重くないし!? ぜんぜん軽いし! 羽毛のごとくかるかるだし!」


 さっきまで耳元にあったその声はしかし、今は俺の腹の上あたりから聞こえていた。

 つまり俺の腹に乗っている物体Xとは――目を開けた俺が、腹の上に載っている物体X=声の主を見ると――、


「……えっと、誰だっけ?」

 そこには誰ともわからない女の子がいた。


 記憶にはない――と思う。

 でもとても可愛い。

 ぱっちりとした目、綺麗な鼻筋、さらさらストレートの長い黒髪。

 理想的な大和撫子(やまとなでしこ)だった。

 

 胸元に赤いリボンがついた、明るめの茶色ブレザーの制服がとてもよく似合っていて、ぶっちゃけとても好みです!


 ――しかしながら、どこをどう見ても初めて見る女の子だったのだ。

 ふっ、こんなかわいい女の子と本当に知り合いだったら、俺が忘れるはずがないからな!

 初対面であることは間違いなし!


「まったくセーヤくんってば、いつまで寝ぼけてるのよ?」

「いや、え? 知り合い? あれ、でも俺ってたしか――」


 あれ? なんだ、俺って――?

 思い出せない……頭にもやがかかったような――

 

「えっと、俺って、麻奈志漏(まなしろ)誠也だよな? ここは日本? あれ、今日っていつだっけ?」

 間抜けな質問をしてしまう俺。


「もうなに言ってるんだか……起きてるように見えて実はまだ寝てるの? セーヤくんったらあいもかわらずおバカなんだから……ここは日本、今は高校2年の4月で、今日は始業式でしょ。今日から学校行かないとだめなんだから、早く支度支度(したくしたく)!」


「始業式……? 高校……? 俺が……?」

 いやそれはないだろ――俺がそう言いかけた時、


「ねぇ、私の目を見て、セーヤくん」

 謎の美少女が俺の頬に両手をそっと添えると、おでこがこっつんこするくらいに顔を近づけ視線を合わせてきた。


 女の子のシュガーであまーい匂いが俺の理性をほわわーんと包み込んでくる。


 その可愛いすぎて何でも許しちゃいそうなオーラと、思わず引き込まれるような不思議な魅力に彩られた目を見て、


「うん、そういえばそうだった。俺は麻奈志漏(まなしろ)誠也、高校2年生だ。なんで自分のことなのに忘れてたんだろ……」


 俺はやっと自分が高校2年生で、今日1学期の始業式を迎えていたことを思い出したのだった。


「なんか変な夢を見てた気がする……異世界……《神滅覇王(しんめつはおう)》――ってなんだっけ? ま、いっか夢だし」

「……」


「ごめんついでにさ。えっとその、君の名前はなんだっけ……? なんかど忘れしちゃったみたいで……」

「ケンセーよ」


「なんか変な名前だな……」

「従兄妹で幼馴染の私に変な名前とか今更いうなし!」


「え? いとこ? おさななじみ? ……あ、うん……そういわれればそうだっけ……そうだったな、悪いケンセー、今度こそもう大丈夫」

「……」


「? どうしたんだよ?」

「……別に」


「それより、そろそろどかないか。その、スカートめくれてパンツ見えちゃってるよ?」

「ぎにゃーーーー! もう、セーヤくんのえっち!!」


 ケンセーは慌てて俺の上から飛びのくと、ベッドから降りていそいそとスカートのすそを直しはじめた。

 ちょっと涙目になりながら睨んでくるのが可愛すぎて困るんですけど!?

  


 ――とまぁそんな感じで、麻奈志漏(まなしろ)誠也の高校2年が始まったのだった――。

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