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第400話 MS-06秘密製造工場

 東の辺境・衛星都市アウド。


 現在絶賛開発中の新たな街の中心部に、東の辺境で最も有名&最大手のトラヴィス商会の支店兼、まんじゅう製造工場があった。


 そこでは万が一にも情報漏洩(ろうえい)がないようにと、厳重なセキュリティチェックと徹底した情報統制のもと、とある極秘プロジェクトが最終段階を迎えようとしていた――。


 つまるところ『《神滅覇王(しんめつはおう)》マナシロ・セーヤまんプロジェクト』である。


「新型まんじゅうMS-06(エムエス・ゼロロク)、準備は順調なようですわね」

 金髪お嬢さまの言葉に、


「はい、お嬢さま。つつがなく進んでおります」

 そばに控えるクールビューティなメイドさんが凛とした声で答えた。


 ちなみに「MS-06」は本来、試作品である『マナシロ()セーヤ()まん最終試作モデル第6号』の略称だったのだが、製品化にあたって正式な商品記号として採用されていた。


・商品記号:MS-06

・商品名:《神滅覇王(しんめつはおう)》マナシロ・セーヤまん


 である。

 商品名が非常に長ったらしいため、関係者からは「エムエス・ゼロロク」とか単に「覇王まん」と呼ばれていた。


 指揮監督を務めるはもちろん金髪ちびっ子お嬢さま。

 企画段階からその全てにかかわってきた栄えあるトラヴィス商会が嫡子サターホワイト・マテオ・ド・リス・トラヴィス、通称サーシャその人である。


「材料の選定、職人の習熟訓練、宣伝と販路の確保、そして最大の懸念だった精緻(せいち)な焼きゴテの製作――オールクリア。ふむ、準備はこれ以上なく順調に進んでおりますわね。あとは発売イベントの段取りくらいでしょうか」


 資料を片手に各担当部長から進捗(しんちょく)報告を受けつつ現場をつぶさに見て回りながら、満足げなコメントをする金髪お嬢さま。


「それもこれも全てお嬢さまの熱意と手腕にございますれば」

 そんなご満悦なお嬢さまを、傍らに控えるトラヴィス筆頭格メイドのクリス・ビヤヌエヴァが恭しく褒めたたえた。


 実際のところ、精緻(せいち)な焼きゴテを彫った凄腕の彫金職人を探し出したり、ふんわりとしたサーシャのイメージを実際に商品化レベルに落とし込むなど、尽力したのは彼女たちサーシャに忠誠を誓ったお嬢さま付きトラヴィスメイドさん部隊である。


 しかし彼女たちにとって、主であるサーシャの手柄は何よりも価値のあるご褒美であったので、つまりサーシャもメイドさん部隊も並々ならぬ達成感に満ちあふれていたのだった。


「発売から間を置かずに、第2弾も用意したいですわね。より一層セーヤ様を格好よく表現したいものですわ」

「さすがはサーシャお嬢さま、もう既に次なる一手まで見据えておられるとは、このクリス感服いたしました」


「ふふっ、それほどでもありませんわ。これもセーヤ様を思う婚約者(ファミリー)の務めですもの」


「……左様でございますね」


 おそらくお嬢さまは大きな勘違いをしておられると、クリスは思っていた。

 しかし敢えては口にはしない。


「――あら、企画・宣伝部長が来たようですわね。では早速、新発売イベントの最後の打ち合わせをいたしましょう。ここまでの準備は完璧です。逆にここまでやったのですから、これはもう華々しく売り出さねばセーヤ様のお心も曇ってしまわれるというもの」


「……左様でございますね」


 過剰に美化されすぎてもはや誰ともわからない「自画像」を焼き印され、それに自分の名前がついたまんじゅうを大々的に売り出されて、それで彼の心が曇らないわけがないのだが、


「お嬢さまの御心のままに」


 クリスはここでも敢えてその考えをスルーした。

 彼女にとってはお嬢さまが、誰よりも何よりも第一であるからだ。

 お嬢さまが喜んでくれるのならば、ぶっちゃけマナシロ様がどう思おうと知ったこっちゃない。


 それに婚約者(ファミリー)の件に関しても、自分たちお嬢さま付きメイド部隊が現実にしてしまえばいいだけの話なのだから――。


 なんていかにもな主従の会話をしていた時だった。


「た、大変です――! お嬢さま! クリス様! マナシロ・セーヤ様が、お倒れになられました!」


 サクライ家に派遣している連絡係のメイドが一人、血相を変えて飛び込んできたのは――!

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