第395話 完全勝利
「――だって私は、マナシロさんを好きになっちゃったんですから」
「……はい?」
ティモテは急に何を言いだしたの?
「えっと、今はティモテが教皇になるかならないかって話をしていたと思うんだけど……いや好きって言われるのは嬉しいんだけどね?」
ティモテみたいな可愛い女の子に好意を持たれて嫌な気持ちになる男がいるだろうか? いやいない。(反語)
「えっと、ティモテが俺のことを、好き?」
「はい! 何度も何度もカッコよく助けられちゃいましたから」
「そ、そうか……」
面と向かって言われると、とても照れるんですけどっ!?
だって俺まだ童貞なので!
「教皇というのは、皆を平等に愛さないといけないんです。だからマナシロさんを好きになった私は教皇にはなれません」
「そんなルールがあるのか。うーん、教皇って大変だなぁ――」
「だから私はマナシロさんを特別に好きなままで、だけどそれ以外の全ての人も愛する教皇を越えた教皇、超教皇になってみせます!」
「ちょ、超教皇?」
「いいえ、必ずなります! マナシロさんがSSS級へと至ったように、私もSSS級の超教皇に! ――あふっ」
勢いよくしゃべっていたティモテが急にガクッと崩れ落ちたかと思うと、俺の胸に体重を預けてもたれかかってきた。
すぐに、
「ん――ぅん、マナシロさん、すぅ――」
ティモテの口からは俺の名前が出て、そのまま安心して落ち着いたのか寝息のような音が漏れ出でてくる。
「そうだよな。《魔神》に身体を乗っ取られてたんだもんな、疲れがあるよな」
急に倒れ込んだティモテではあったけれど、その幸せそう&可愛らしい寝顔を見る限り、本当に単に疲れてバタンキューしただけのようだった。
――とまぁそんなこんなで。
ティモテの無事を確認した俺は、ほっと一息をついたのだった。
「《魔神》を討滅した上に転生も阻止した。さらにティモテも無事と。これで綺麗さっぱり完全無欠で文句なしに終わりだな。やれやれ、まさかのSSS級相手にこの結果とかさすが俺だな。完全勝利すぎる」
俺の思わず口をついた自画自賛を皮切りに、
「あーもう! 焼き芋になった気分!」
《精霊融合》を解除した精霊さんがものすごい勢いで俺の中から飛び出してきた。
色が濃くなっているというか小麦色になっているというか、ちょっとこんがり焼けてしまっていた。
《神滅覇王》との共存は相当熱かったらしい。
っていうか精霊=エネルギー生命体って焼けるんだな……。
「アンタはいつも話が長いのよ! さすがのアタシもいいシーンすぎて出るに出れなかったんだからねっ!」
「まさか精霊さんが空気を読んだだと……!?」
「アンタねぇ……!?」
「ごめんごめん精霊さん、本当に助かった。とてもとても感謝してる。熱かっただろ? 頑張ってくれてありがとうな」
「ま、アタシがいればこその勝利ってことよね! 物わかりがよくて何よりよ! まぁアンタも頑張ってたけど! ティモテも無事だったし!」
感謝の言葉を述べた俺に、いつも通りの元気な様子で応えてくる精霊さん。
精霊さん、実のところかなり力を消費しているはずなのに、全く疲れた素振りを見せないのは見習わないとな。
……単にどこまでも陽キャな性格なのかもしれないけど。
逆に興味ないことだとすぐにどっか行っちゃうサボりの常習犯だし。
「主様、主様! 妾の力も役に立ったのじゃ! 妾と主様の共同作業のSSS級だったのじゃ!」
続いて《神焉竜》がむふー!と鼻息も荒く駆け付けてきた。
「おうよ! 《神焉竜》もサンキューな! 黒粒子がガンガン入ってきて背中を押ししてくれたから、俺もイケイケで突っ込んでいけたよ」
「むふふ、主様に褒められたのじゃ……では褒められついでに、なでなでを所望するのじゃ。論功行賞なのじゃ」
俺はずいっと突き出された《神焉竜》の頭を、これ以上ないくらい気持ちを込めてなでなでしてあげた。
「むふむふ……むふむふ……むふっ」
うんうん、喜んでくれたようで何よりだ。
そこへグレンがやってきたものの、《神焉竜》が甘えてるのを見て空気を読んだのか、こっちは何も言わずに俺に目礼だけすると、隅っこに歩いていって腰を下ろした。
えっと、もうアンタに特に用はないと思うんだけど、まだ帰らないのかな?
遺恨はあるにしても、共闘したあと今さらになって敵対する気もないだろうし……まぁグレンのことはいいや。
そのうち帰るだろう。
そして最後にウヅキと巫女エルフちゃんがやってきた。