第393話 -インタールード- サクライ・ウヅキ
「はい、きっと大丈夫だと思いますー」
――どちらも高難度のマルチタスクとはいえ、やってやれなくはないはずだ。
そもそも私クレアノーラは、はおー様をサポートするお役目を与えられた誇り高き巫女エルフ。
ここで私がやらねば誰がやるというのでしょうか!
「それは重畳です。あれは後々に禍根を残します。ここで確実に終わらせちゃいましょう。ジ・エンドです」
「わかりました。ではすぐにとりかかりますー」
「ふふっ、超早いでお願いしますね。そろそろ決着がついちゃいそうですから。ただ勝つんじゃなくて、ちゃんと妨害をした状態でセーヤさんに勝ってもらわないといけませんからね」
「なにとぞおまかせをー」
私の答えを聞いたウヅキさんが、満面の笑みでほほ笑んだ。
……こうやって見ても特になにかウヅキさんにおかしなところはない。
私の考えすぎでしたか――。
「それにしても《リインカーネーション・システム》ですか。転生を繰り返して強くなり、《神滅覇王》を超える存在を作り出す。――人類は本当に私を困らせるのが好きですねぇ。やれやれ困ったものです。そこがまた可愛いのですけど」
「――ウヅキさん?」
ウヅキさんがなんだかよくわからないことを言っていた。
よく考えればわかったのだろうが、あいにくと今の私は《最終融合-ファイナル・フュージョン》の維持をしながら《リインカーネーション・システム》の妨害を行うという困難なミッションに取り組んでいて、それ以外のことにあまり気を回す余裕はなかったのだ。
「――ですがそれももう終わりです。わたしの《神滅覇王》が《魔神》をここで終わらせちゃいますから。それにしてもSSS級すら倒してしまうなんて、さすがはわたしの《神滅覇王》、さすがはわたしのセーヤさんですね。想像のはるか上を行く、文句なしの歴代最強の《神滅覇王》です。わざわざ異世界から召喚んだ甲斐があったというものです」
「あの、ウヅキさん……? さっきからなにを言って――」
作業に集中しながらもやっぱり気になってそう問いかけたところで、猛烈な力の高まりとともに溢れんばかりの黄金の光が世界を覆いつくしていった。
まるで太陽が地上に舞い降りたような、その世界をあまねく照らし出す世界最強の輝きは――、
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
はおー様が立ちふさがる全ての敵を倒してきた、その黄金に輝き誇る必殺の一撃を《魔神》へと打ち放ったのだ――!
私はプルプルと顔を振った。
「……集中しないと、ですね。ここまできて《魔神》を転生させるわけにはいきませんから。はおー様に仕える巫女エルフの名にかけて、クレアはクレアのやるべきことを――」
私はウヅキさんの様子が気になりながらも、しかし最優先事項である《リインカーネーション・システム》を妨害することにすべての神経を集中していった。
その甲斐あって《魔神》の転生を完全に封じることに成功する。
「ミッション、成功です……やりましたー!」
――だから私はその言葉を聞き逃してしまった。
「ふふっ、もはや障害はすべて取り除きました。レディパーフェクトリー。準備は完全に整いました。さぁ世界の終わりを始めましょう――」