第391話 決着の時 -天地開闢セシ創世ノ黄金剣-
「ひっ、ひひっ、……これは、これはもう無理だね。《魔神》という存在そのものが崩壊しはじめたよ……とても勝てない……まさかこんな奥の手を隠し持ってたなんて……失敗失敗、ひひっ――」
その言葉を皮切りに、《魔神》の抵抗がピタリと止まった。
だらんと腕を下げてしまい、完全な無防備を晒している。
「なんだもう諦めたのか?」
「……諦めた? うーんそれはどうだろね? 確かに今回は私の負けだ、負けだよ……とっとと倒せばいい。でもね? ギヒッ」
そこで《魔神》は言葉を切ると、ニタァと気色悪く笑いやがった。
「イヒひッ、私には次があるの……この負けを糧に、『固有神聖』《リインカーネーション・システム》で次に転生する。それでもダメならさらに次へ――! ヒヒッ、代を重ねることで私はさらなる高みへと昇ってゆく――!」
「ちっ、こいつ負けても転生してパワーアップしてやり直せばいい、マジで反則みたいな能力持ちやがって……」
「今回はお前の勝ちだ。いいよ、認めよう。当代の《神滅覇王》マナシロ・セーヤ、お前は本当に強かった。よもやSSS級の《魔神》に至りながら敗れるとは、思いもよらなかったよ、ヒヒッ」
ニタニタと笑いながら《魔神》が言葉を続ける。
「でもね? だけどね? イヒッ、最後に勝つのはやっぱり私。転生を繰り返し、必ずや《魔神》は《神滅覇王》に勝利する! そしてその時にSSS級のお前はもういない。ギヒッ、イヒッ、ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒッッッ!!」
「――それでもさ。少なくとも今この瞬間に、ティモテを苦しみから救い出せたことには変わりないんだ。後のことは後に任せるさ。きっと俺よりスゴい奴がいるはずだからそいつがどうにかしてくれるだろ? ――俺の今やるべきことは、ここでお前をかっちりきっちり討滅することだ」
「違うね、そうするしかないんだよ。先延ばしにするしか手はないの。負け惜しみはやめなよ、ヒヒっ」
「いちいちイラつく野郎だな、負けたくせに何を偉そうに言ってやがる」
「次の《神滅覇王》は《魔神》に勝てるかな? その次は? その次の次は? イヒッイヒヒヒヒひ――ぎひっ?」
ズタボロにされながらも、しかし気色の悪い笑いで、待ち受ける仮初めの滅びを待っていた《魔神》が、
「な、どうした……の……!?」
しかし突如として真剣な顔へと変わったのだ。
「どういう……こと……? 《リインカーネーション・システム》が起動しない? なにが、何が起こっているの!? ――まさかお前か! お前が何かしたのか? 《神滅覇王》マナシロ・セーヤっ!!」
「あ? 俺は何にもしてねーよ。つーか何ができるってんだよ。でもまぁそういう事なら話は早い。ご自慢の《リインカーネーション・システム》が、どうも壊れたってことだよな? つまり――今ここでなら! 《魔王》が《魔神》へといたる――その永遠を生きるクソみたいなシステムごと、絶ち切ってやれるってわけだ――!」
「ひっ――」
「持ちうる全ての力を《天地創造セシ那由他ノ武御雷神剣》へ――!」
「ま、まって――」
千載一遇のチャンスだ、誰が待つか!
「『古き世界は鼓動を止め――』」
「『新なる世界の幕が上がる――』」
「や、やめ――」
ティモテの身体、返してもらうぞ――!
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
世界最高輝度の黄金剣が、後ずさる《魔神》へと一片の容赦もなく振り下ろされた――!