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第40話 何一つ間違ってはいないんだけどさ……

 異世界転生も3日目。


 今日の俺は、昨日と違って朝一でばっちり起床していた。

 朝、起きたい時間にいい感じで起きることができる日常系A級チート『おはよう朝ごはん』を使ったのだ。

 それはもう気持ちよく起きることができたので、ちょっとびっくりしている。


「地味にすごいチートだな……こんなに気持ちよく目覚めたのっていつ以来だ? 社会人になってからはマジで記憶にないんだけど……」


 すがすがしい朝を満喫しながら居間に向かうと、ウヅキがご飯の用意をしていた。

「あ、おはようございますセーヤさん」

「うん、おはよう、ウヅキ」


「今から起こしにいこうと思ってたんですけど、必要なかったみたいですね。さすがです、セーヤさん!」

「あはは、朝起きただけだから……って、今日は焼き鳥か。今日の朝ごはんもおいしそうだな」

 室内には既に鳥が焼ける香ばしいにおいが漂っていた。


「塩で薄めに味を付けてあるので、朝からでも食べやすいと思いますよ。もう少ししたらできるので、ちょっと待っててくださいね」

「おっけー、了解だ」

 その後、ハヅキとグンマさんがやってきて、「いただきます」の掛け声とともに朝ごはんがスタートした。


 ――事件が起こったのは、そんな朝食を囲む席でのことだった。


「今日の焼き鳥も美味しいなぁ。実は朝から焼き鳥って重いかなって思ってたのに、物足りないギリギリ手前の絶妙な塩加減でさ。これならいくらでも食べられそうだ」

「ふふっ、どこを食べてもちゃんと味がするように、裏と表にまんべんなく均一に塩を振るのがコツなんですよ」


「ほんとウヅキは料理上手だな」

「えへへ、ありがとうございます」


 ここまでは昨日と変わらない、美味しいウヅキの手料理に舌鼓を打つ平穏な朝の風景――のはずだった。

 そう、ここまでは。


「そう言えばセーヤさん」

「ん? なに?」


 言いながら焼き鳥をもう一本ほおばる。

 うん、実にうまい――


「昨日の夜はハヅキとお風呂でお楽しみだったんですってね」


「んがっ! んぐっ! げほっ!」

 焼き鳥が、喉に、詰まった――!


「はわわ、セーヤさんお水です、お水!」

 慌ててウヅキが差し出したお水を、ごくごくと一気に飲み干す。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「まなしー、だいじょぶ?」

「……ああ、もう大丈夫だ」


 そうハヅキに答えながら、さりげなくチラリとウヅキの顔色を(うかが)うと、とてもにこにこしていた。

 なんだろう、その可愛い笑顔がいつもと違うと感じてしまったのは、俺にやましいところがあるからなのだろうか?


 俺は浮気がばれた旦那のごとく、半ば本能的に居住まいを正した。

 作法系A級チート『不動如山うごかざることやまのごとし』が発動し、それはもう美しい正座姿に移行する。

 誠意を、誠意を見せなくてはならない、そんな気がした。


「えっと、その、なんでそのことを……」

「ハヅキが嬉しそうに教えてくれましたから」

「そ、そうか……」


「なんでも優しく抱きしめながらずっと愛撫していたとか」

「えっと、それはその……」


「あれ、違うんですか?」

「ち、違いま――せん……」


 違わないし、まったくもって事実なんだけど、その、ニュアンスというか受け取り方が大きく間違ってませんでしょうか?


「最後はハヅキの中に入って、温かいもので満たして幸せにしてあげたと」

「すごい、それだけ聞くと俺は完全にアウトだね!?」


「どうしたんですか急に? ふふっ、わたしもいつかセーヤさんに……なんて、きゃっ、言っちゃった!」

「いやだから明らかに誤解がね?」


「そんな隠さなくてもいいんですよ。だってセーヤさんの魅力は、えへへ、わたしが一番知ってますから!」

「いやだから……グンマさんも何か言ってあげてください」


「マナシロさま、孫娘たちのことをよろしく頼みましたぞ」

「ちょ!? グンマさんまで!? しかもものすごく優しい目をしている!?」


 こうして俺の弁解むなしく。

 誤解は一ミリも解けないままに、朝食の時間は終わりを告げたのだった。


「いやまぁウヅキも別に怒ってるわけではなさそうだったので、これはこれで良かった……のかな?」


 この世界の結婚観とか家族の形態について少し気にはなったんだけど、


「ハーレムっておっけーなの?」

 とか質問して、藪をつついて大蛇が出てくるのだけは避けたかったので、とてもじゃないけど聞けませんでした!

本作をお読みいただきありがとうございました。

よろしければブックマークや評価をいただければとても嬉しく思います。

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