第387話 鉄壁の防御
「もうちょっとだ、もうちょっとで崩せるんだ……! おおおおおぉぉぉぉっっっ!!」
気炎を揚げて猛攻を繰り出し続ける俺に、
「ヒヒッ、確かにもうちょっとだけどね、でもそのちょっとが足りないかな? イひッ、ほらほら、かかってきなよ?」
《魔神》は茶化すように言いながらも、しかし決して鉄壁の防御を緩めようとはしてこない。
「うるせぇぇぇっっっっ!!」
渾身の力を込めたフルパワーの斬撃が《魔神》を一瞬吹き飛ばしかけ、しかし踏ん張られて堪えられてしまう。
「どうしたの、攻撃が荒っぽくなってきてるよ? それに最初からずうっとフルパワーだもんね? きっと《真覚醒・神滅覇王》はパワーを落として力を調整したりはできないんでしょ? 全力で燃え尽きるようにしか戦えないと、そろそろ疲れてくるんじゃないかな?」
「それがどうした!? このまま一気に押し切ればいいだけの話だ――!」
まばゆいばかりの黄金の粒子を振りまきながら、俺の攻撃はさらにさらにと苛烈さを増してゆく。
しかし《魔神》はそのことごとくを防御しきってみせて――。
認めたくはないが、『剣神』と《真覚醒・神滅覇王》によるSSS級ツインドライヴを捌いてみせるとは、さすがのSSS級だ――!
「こうやってそっちが疲れるまでガードに徹して粘っていれば、最後は私の勝ちだよね、ひひっ!」
「くっ、こいつ、脳筋バカだと思ってら存外にクレバーな戦術をとりやがって……!」
いや落ち着け、大丈夫だ。
あと一歩で切り崩せそうなところまではいっているんだ。
防御を崩しきるチャンスは必ずあるはず……!
「ひヒッ? まだ体力の方は大丈夫ぅ?」
「余計なお世話だ! それにそういうお前だって――」
俺は《魔神》についてある確信を持っていた。
「お前だって『固有神聖』をもってないよな」
「――ヒヒッ?」
俺の両目は、いまや黄金の光に満ちあふれていた。
S級チート『龍眼』が昇華しランクアップした、すべてを見通す神話級知覚系SSS級チート『神龍眼』が発動しているからだ――!
「つまりお前は、SS級以上が本来持っているはずの神にも比肩する『切り札』を持ってはいない! 今のこの状態が最大戦力ってことだ」
《魔神》はにやにやと笑ったままで答えないけれど――、
「いや、違うな……そうか、リインカーネーション・システムだ。あれが《魔王》の――ひいては《魔神》の『固有神聖』なんだ。転生によって代を重ねて力を蓄え、SSS級の《魔神》へと至る無限連鎖の転生システム――それ自体が『固有神聖』なんだ……!」
「いヒッ、やれやれ本当にすごい目だね、それ。さっきからキラキラ光っててすごく綺麗だし。まるでなんでもお見通しだね……でもね? それが分かったからってどうなるの? なにか変わるのかな? 『固有神聖』っていえば、持ってないのはそっちだって同じだよね?」
「――ちっ」
「あれ? もしかして気付いていないとでも思ってた? だってそれは――《真覚醒・神滅覇王》は複数のSS級の力を無理やり融合させることで、出力だけはなんとかSSS級に到達しただけの、なんちゃってSSS級だものね? それで神に比肩する超存在の本質が具現化した『固有神聖』を、持てるわけがないからね! ヒっ、ギヒっ、ギヒヒヒひッ――」
「――――」
勝利を確信した、耳障りな《魔神》の哄笑があたりに響き渡った――。