第377話 絶望ニ染メヌカレシ闇紅ノ魔神剣 ― グリムヴェル
《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》の刃を――、
「おおおおぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!」
――超速の踏み込みから、俺は《魔神》へと叩きつけた!
《魔神》は防御しようとして、
「んぐぐっっ――!?」
しかし防御しきれずに、《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》の黄金の刃が《魔神》の身を強烈に打ち据える――!
「防御を打ち抜いたっ! 間違いない、効いている!」
やはりダメージは通る!
ならばこの機を逃す手はない。
俺はここがチャンスとばかりに間髪入れずに追撃を敢行する――!
「おおおおおぉぉぉぉぉっっっ!」
連撃につぐ連撃を怒涛の勢いで繰り出してゆく――!
裂帛の気合とともに繰り出される、嵐のような猛打に打ち据えられて、
「キ、キひッ……!」」
《魔神》がじりじりと下がりだした。
当然だ。
《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》は、その一撃一撃が《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》と同クラス――!
「いいや、密度を高めている分だけ威力はさらに増大しているんだ――!」
いかにSSS級の《魔神》と言えど、無傷ではいられないはず――!
当然その代償というか、暴走寸前で超稼働を続けている《天照》のコントロールが問題になってくるのだが、
「いいぞ、こっちも想像以上にうまく共存できている――」
《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》が次から次へと出力された黄金の力を吸い取っていくおかげで、自然と《天照》の暴走が止められてているのだ。
「ひヒッ、なんだ、その剣――! ずるい! 卑怯者! イヒっ、この悪魔の手先めが! 殺す!」
防戦一方になった《魔神》が、俺を口汚くののしってくるが、
「はんっ、見たか! これが竜より生まれし神剣の真の力だ! 日本神話が誇る伝説の聖剣にして、当代の《神滅覇王》麻奈志漏誠也の最高の相棒! 《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》を舐めんじゃねぇぞ! うおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
俺は気合一閃、さらに苛烈に《魔神》を攻め立ててゆく。
「ううううう! ずるいずるいずるい! 殺す殺す殺す! ぬぐぐぐぐぐっ!!」
「よし、いける、いけるぞ――!」
わずかだが、しかし確かな手ごたえを俺が感じはじめた時だった――、
「《神滅覇王》! 殺す――!!」
叫び声とともに、鋭い一閃がカウンターで打ち放たれたのは――。
「――くっ!」
慌てて飛びのいた俺の眼前を、風切り音とともに赤黒い剣線が通ってゆく。
いつの間にか、《魔神》の手には一本の剣が握られていた。
この剣は――!
「魔剣グリムヴェルか――!」
グレンから跳ね飛ばした魔剣グリムヴェル。
その魔剣が落ちたところまで来ていたことに、今更ながら気づかされる。
「押されて下がっていたのは、グレンが落とした魔剣を拾うためでもあったのか――!」
そして《魔神》はただ魔剣グリムヴェルを拾っただけではなかった。
「ふぬぬぬぬぬぬっっっ!!」
突如として、魔剣グリムヴェルが《魔神》のまとう赤黒いオーラを猛烈に吸い込みはじめたのだ。
それはまるで《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣》の色違いバージョンでも見せられているかのようで――、
「おいおい、まさか『固有神聖』《ヤマタノオロチ》を見よう見まねで真似したっていうのか!?」
いまや《魔神》の手には、
「ひひひ、これで対等……! これで殺せる……!」
否が応でも不安を掻き立てられる闇紅色に染まった新たな魔剣が――《絶望ニ染メヌカレシ闇紅ノ魔神剣》が生まれ落ちていた――。