第375話 オーバーリミット
《神滅覇王》の最終奥義、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》。
初めて《神焉竜》と戦った時の大きさは30メートルだった。
次に《シュプリームウルフ》と戦った時は50メートルと、サイズも威力も増大していた。
そして今はさらにその倍となる、100メートルにも達しようかという長大な黄金大剣となっている――!
「おそらくこれが《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》の最大出力――!」
その強靭なる最強無比の一撃を――、
「立ちはだかる全ての強敵を打ち倒してきた《神滅覇王》の超級奥義、受けてみろ――!」
黄金に輝く裁きの鉄槌を打ち下ろす――!
「おおおおおおぉぉぉぉぉっっっっ――――!!」
裂帛の気合とともに打ち下ろされた黄金の神剣はしかし――、
「ん――」
《魔神》の素手で無造作に受け止められると、見る見るうちに力を失い、最後は小さな灯へと成り果て、消え失せた。
「これで眩しくなくなった」
「おいおい、今のを受けて無傷かよ……」
しかもろくすっぽ防御もせずに――だぜ?
「絶対防御の《神焉竜》すらもねじ伏せた《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》を無造作に握りつぶすとか、もうめちゃくちゃだな、おい」
これがSSS級、文字通り格が違う……!
「けどな、それくらいは俺だって織り込み済みだ!」
なんせ規格外のSSS級を相手にしようってんだ。
普通にやって勝てるなんざ、思ってねぇよ!
俺の燃えたぎる戦意を受けて、《天照》が再び限界を超えて回り始める――!
「『古き世界は鼓動を止め――』」
「『新なる世界の幕が上がる――』」
一度目よりもさらに激しく、嵐のようなうなりをあげて極大の力を生み出してゆく《天照》。
安全マージンを極限まで削り、《天照》が制御不能で暴走するリスクを負いながらの――これは限界をも超えた超越の黄金神剣!
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
さらなる威力を蓄えた黄金剣が、周囲を煌々と照らしながら、再び《魔神》へと振り下ろされた――!
まさに渾身の一撃。
だがそれでも――、
「ふん!」
《魔神》は軽く頭上で両手ガードをすると、《天照》の臨界ギリギリの一撃をこともなげに防ぎやがったのだ。
そして、
「《神滅覇王》――殺す!」
今度は逆に《魔神》が自分の番とばかりに一直線に踏み込んでくると、一見なんてことはないグーパンチを放ってくる。
しかしそれは、
「殺されるかっつーの! ATフィールド――! ぐぅ――っ!?」
トワ=《スサノオ》の収束荷電粒子砲すら無効化した《神滅覇王》の無敵の防御フィールドを、ものともせずに貫いてきたのだ――!
「こんのおぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」
グーパンはそのまま、迎えうった俺の強烈な上段斬りと激突する――!
黄金の力と赤黒いオーラが激しくぶつかり合いせめぎ合い――そしてそのたったのグーパン一発で、
パリン――ッ!
「くぅ――っ!?」
黄金に輝く《草薙の剣》が、ガラスが砕けたような軽い音とともに、粉々に砕け散ったのだった。
さらにその衝撃の余波で、俺は20メートルほど後ろに吹っ飛ばされて――、
「うぉりゃっと――!」
しかし追撃を警戒しながら空中で体勢を立て直すと、足から綺麗に着地をしてみせた。
「――やれやれ、ここまで一方的だともう大人と子供のケンカだな」
まさかSS級神剣となった《草薙の剣》が、グーパン一発で粉みじんにされるとは。
「でもま、今ので分かったこともあるんだぜ?」
一撃目はあっさりと握りつぶされたが、威力をあげた二撃目は軽くとはいえ防御してきたのだ。
――ってことはだ。
「《天照》を暴走覚悟のオーバーリミットで回せば、少なくとも何らかの防御は必要で――」
とどのつまりそれは――、
「SSS級とはいえ無敵じゃない。《神滅覇王》の攻撃が絶対に通らないわけじゃないってことだ――!」