第374話 SSS級《魔神》復活
溢れんばかりの黄金の粒子をまとって俺の中に顕現した《神滅覇王》。
一瞬、俺が俺でなくなってしまいそうな、そんな恐怖を感じるほどの今までにない圧倒的な存在感は――、
「《神滅覇王》も俺と同じで、『理不尽』ってやつに怒り猛ってんだな――!」
――紛れもないその証だ。
「う――――ぁ――――」
そして《神滅覇王》の顕現と前後して、ティモテのうめき声が上がったかと思うと、その身体が赤黒のどす黒いオーラに包み込まれた。
それは身の毛もよだつ悪意に満ちた、破滅の力の集積体。
その中から、ティモテの身体をそっくりそのまま借りたSSS級の《魔神》が這い出るように姿を現す――!
「終わりだ、もはや世界の滅びは免れぬ……」
相も変わらず鬱陶しいことを言ってる陰キャ野郎のグレンは無視するとしてだ。
「よぉ《魔神》、お前SSS級なんだってな? 普段ならその力、どれほどのものか存分に試してやるところだが――」
俺はちらりと右手に視線をやった。
そこにあるは、黄金に輝く美しいひと振りの日本刀。
それは日本神話最強の、龍より生まれし聖なる剣。
《神滅覇王》の黄金の力をこれでもかと喰らい、その『固有神聖』《ヤマタノオロチ》によってSS級神剣としての力を発現させた《草薙の剣》だ――!
「――残念ながらお前だけは別だ。何年も何年もティモテのことを苦しめ続けたお前には、問答無用で《神滅覇王》の全力をお見舞いしてやる――!」
――と、
「神めツ、覇オう――?」
不意に《魔神》がカタコトで問うてきた。
「ああそうだ、俺が《神滅覇王》の麻奈志漏誠也だ。やられる相手の名前だ、しっかりと心に刻んでおけよ?」
「ワ、私ハ《魔ジン》……《神滅覇王》をこロすため作らレた、リインカーネーション・システム……」
「なんだそりゃ? 自己紹介か? カーネーションって花の名前だろ? 意味わかんねぇんだよ」
「《神滅覇王》はこロす、ころす、殺す、殺す! 《神滅覇王》は殺す!!」
そしてたったこれだけの会話で、
「まさかもう適応したのか――」
最初カタコトだった《魔神》の言葉は、もう既にしっかりとした言葉になっていた。
ま、でもそんなことはどうでもいいんだ。
なにより俺がムカついて許せないのは――、
「おいこらてめぇ、いい加減にしろよ? ティモテの身体で、ティモテの声で、ティモテの顔で! 俺を殺すとか言ってんじゃねぇよ!!」
俺の怒りの雄たけびを受けて、《神滅覇王》の誇る最強の『固有神聖』《天照》が、暴力的なまでの黄金の力を生み出し始める――!
「覚悟しろよ《魔神》。今日の俺はすこぶる機嫌が悪いんだ。初手から手加減抜きで叩き潰してやる――!」
高々と宣言すると、俺は神剣《草薙の剣》を立てて顏の右前に――八相の構えに構えた。
そして――、
「『固有神聖』《天照》、完全開放――!」
無限連鎖の黄金の力を生み出す小恒星――《神滅覇王》の根源たる『固有神聖』《天照》。
その膨大な力を、余すことなく神剣|《草薙の剣》へと注ぎ込んでゆく――!
臨界ギリギリまで高まった《天照》から猛然と供給される、果てしない黄金の力。
その全てを注ぎ込まれた神剣|《草薙の剣》が、本物の太陽のごとく猛烈な輝きを放ち始めた――!
「眩しい……」
《魔神》が光をさえぎるように、顔の前に手をかざす。
なにが眩しいだこの野郎、寝ぼけたこと言いやがって。
「『古き世界は鼓動を止め――』」
「『新なる世界の幕が上がる――』」
俺の中を、身体を、心を――!
黄金の光とともに、未来を欲し続ける熱病のような強い強い想いが支配してゆく――!
その強烈な情動に突き動かされるように――、
「我が一刀を受けてみよ、《魔神》!」
極限にまで密度を高めた光り輝く黄金の剣を――、
過去最長の100メートルに及ぼうかという光の大剣を――、
「『光、あれ――、《天地開闢セシ創世ノ黄金剣》――!!』」
俺はフルパワーの必殺剣を、全身全霊を籠めて振り下ろした――!