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第366話 チェックメイト、俺たちの勝ちだ――!

「お疲れ様なのじゃ主様(ぬしさま)

 すぐに《神焉竜(しんえんりゅう)》がねぎらいの言葉を投げてきた。


「《神焉竜(しんえんりゅう)》も援護ありがとう。すごく助かったよ」


「あれくらい大したことはないのじゃが――ぜひにというのであれば、後でなでなでをするがよいのじゃ」


「ぜひともさせてもらうよ。頑張りには報いないとな」

「交渉成立なのじゃ」


 俺と《神焉竜(しんえんりゅう)》がちょっと気の早い戦後の論功行賞に(いそ)しんでいると、


「いったい、いったい何をしたと言うのだ――!」

 グレンが割って入るように、そして驚愕を隠そうともせずに問いかけてきた。


「なに、簡単なことじゃよ。あれは世界の揺らぎを利用する瞬間移動術。揺らぎとはある種の波、波動じゃ。であれば、逆位相の波を発生させてぶつけてやることで、相殺して無効化することは可能じゃろうて?」


「相殺しただと? そのようなこと、一朝一夕でどうにかなるはずがない……! 言うは易し、それがどれほど難しいことか――」


「ふん、たかが1000年ほど生きただけの鬼っころ風情が、最強の王竜たる(わらわ)を己の矮小な物差しで測ろうとするとは、(おご)るでないわ小童(こわっぱ)めが!」


 《神焉竜(しんえんりゅう)》の大喝に、


「ぐうの音も出んとはこのことか……」


 グレンは己を恥じるようにうつむいた。


 ――とまあ、なんか二人でわかりみの深い会話をしてるんだけれど、


「……あの、さも自分が何かやったみたいに言ってるけどさ? 妨害しているのは背中に乗ってる巫女エルフちゃんだからね? アストラル界に転移する術の応用なんでしょ、これ?」


 そう。

 《神焉竜(しんえんりゅう)》の背中には、


「べんとらー、べんとらー」


 巫女エルフちゃんが、ろくろを回すみたいなオサレポーズをしながら座っていたのだった。

 IT会社の社長さんとかがインタビュー写真でよくやっているポーズ、って言えばわかるだろうか?


 目を閉じて精神を集中させ、なにやら高度なことをやっている――と思われる。

 ただまぁ俺にはエアろくろを回しているようにしか見えないので、実際どうなのかはよくわからないですね……。


「いやいや主様(ぬしさま)、それは違うのじゃ。物事には原因と結果というものがあるのじゃよ?」

「え? あ、おう、まぁそうだな。それがどうしたんだ?」


「大元である術の原理を見抜いたのは、これは(わらわ)の『真なる龍眼』によるものなのじゃ。これがなければそもそも妨害することもできぬわけじゃろ? つまりこれは(わらわ)の功績と言っても過言ではないのじゃ」


「いや、それはどうだろう……?」

 思わず言葉に詰まった俺に、


「あのあのえっと! でしたらお二人の功績、ということでよいのではないでしょうか!」

 ウヅキが助け舟を出してくれた。


「ふむ、やはり奥方殿は良いことを言うのじゃ。よきに計らうのじゃ」


 ウヅキのおかげで《神焉竜(しんえんりゅう)》も納得してくれたみたいだった。

 また脱線する前に、とっとと話を進めよう。


「じゃあそういうことで。二人ともありがとうね――ってわけでさ?」


 俺は万策尽きたグレンの眼前に、精霊剣クサナギを突き出した。


 深手を負い、『固有神聖』も使い切って、さらには奥の手の『鬼門遁行(きもんとんこう)』まで封じられたグレンに、もはや臆するものは何もない。


「もうお前に残された手はない。チェックメイト、俺たちの勝ちだ――!」


 動けぬグレンを前に、俺は高らかに勝利を宣言したのだった。

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