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第365話 『鬼門遁行』破れたりなのじゃ

「おおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!」

「ぐゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッ!!」


 気合いと気合がぶつかり合い、


 ギン! ギャリン! ギン! ガギン――!!


 精霊剣と魔剣が何度も相打つ激闘につぐ激闘。


 さらに俺はS級チートを連発することで、『鬼力豪放(きりょくごうほう)』による身体強化によって大幅に速さと力を増したグレンに、紙一重で食らいついてゆく――!


「くっ、先ほどから面妖な術を次から次へと手を変え品を変え――!」

「昔から言うだろ? 芸は身を助くってな――!」


 全チートフル装備は、言ってみれば特殊技能の塊だ。


 そして人間と同じ剣術という枠内で戦うグレンには――《神焉竜(しんえんりゅう)》や《精霊神竜せいれいさん》のようなルール無用のデカ物と違って――それなり以上にチートの効果があった。


 さらには、


「はぁぁぁぁっっっ!!」

 わずかな隙を見ては放たれる《神焉竜(しんえんりゅう)》のドラゴン・ブレス。


「チィ――っ!」

 たとえ当たらなくとも、当たれば即死というのは牽制としては十分すぎる攻撃だ。


 そうして互いに死力を尽くして戦い続けること10分ほどで――、


「……? なんだ……? グレンの身体がしぼみだした……? 気のせい、じゃないよな?」


 『鬼力豪放(きりょくごうほう)』により筋骨隆々に変化していたグレンの身体が、わずかに白い蒸気をあげながら少しずつ小さくなりはじめたのだ。


 同時に、防御するのでやっとだった猛攻がガクッとスピードダウンし、威力も目に見えて低下してゆく。


「そこだ――っ!!」

「ぐぅっ――!」


 グレンのパワーダウンとともに俺の反撃の機会が増え始め、しだいに五分五分のイーブンに――さらには一方的に俺の有利へと状況は変わっていき――。


 キーーーーーンッッ!!


 ひと際高く音を響かせながら魔剣グリムヴェルを跳ね飛ばした精霊剣クサナギが、勢いそのままにグレンの右胸を鋭く切り裂いた。


「ぐぉ……っ!」


 うめき声をあげ、武器を失った手で傷口を抑えながら片膝をついたグレンの身体は――、


「どうやらタイムオーバーみたいだな? 『鬼力豪放(きりょくごうほう)』は時間制限のあるパワーアップ技ってところか?」


 ――今やすっかりと元の老鬼(ろうき)へと戻ってしまっていた。


「本来ならばこんなすぐには終わらぬよ。ふっ……まさか10分ももたぬとはな。ワシも老いたということか……だが――!」


 突如、グレンがクワッと目を見開いた。

 その足元に、黒い影が水たまりにようにぶわっと広がってゆく――!


「まだ終わらぬ――! 『鬼門遁行(きもんとんこう)』!」


 グレンは得意の瞬間移動術でもって、戦場からの離脱を図ろうと――いや違う! グレンの視線は《神焉竜(しんえんりゅう)》の背中にいるティモテをとらえていた――!


「直接ティモテを狙うつもりか――!」


 っていうか『鬼門遁行(きもんとんこう)』は、位置指定がアバウトな移動技のはずだろ?


 そうか、ここ――妖気溜まり=スポットでなら、短距離の精密移動が可能なのか!


「こんの、往生際の悪い――!」

 踵を返してティモテを守りに走りだす――だしかけたところで、


「なに――っ?」


 グレンの足元に広がっていた黒い水たまりが、まるでビデオを巻き戻しにでもしたかのように跡形もなく消え去ってゆく。


「ばかな、我が秘術が――! いったい何をした?」


 驚くグレンを尻目に、


「『鬼門遁行(きもんとんこう)』破れたりなのじゃ」


 これで完全に戦闘終了と見た《神焉竜(しんえんりゅう)》が、軽く羽ばたくとみんなを乗せたまま俺の隣へとやってきた。

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