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第363話 『鬼力豪放』

「おいおい。つい昨日、負けそうになってどうにかこうにか逃げのびた奴のセリフとは、とても思えないな?」


「要はこういうことだマナシロ・セーヤ。先の戦いではこちらが誘い込まれたが、今回はその逆だったということだ――」


 ニヤリと、グレンが笑う。


「なん……だと……?」


「よもや用意していたのが、罠だけだとでも思っていたか?」


「まさか――」


 ――いや、落ち着け。

 これははったり(ブラフ)だ。


 《神焉竜(しんえんりゅう)》の『真なる龍眼』でしっかりと確認している。

 グレンが罠以外に用意したものはなかったはずだ――!


「ふむ、用意という言葉は適切ではないな……なぜならこの地を選んだ時点で、全ての準備は終わっているのだから」


 選んだ時点で?

 ってことはつまり、この場所自体に何らかの意味がある――!?


「ここは暗黒大陸ほどではないが、妖気に満ちたなかなか悪くない場所ゆえな――」


 グレンの言葉に、


「――はっ! ここはスポットです!」

 俺の後方、《神焉竜(しんえんりゅう)》の背中から声が上がった。


「知っているのか、ウヅキ?」

 いつものように俺が振り返って尋ねると、


「本で読んだことがあります! 大陸にはところどころスポット=妖気溜まりと呼ばれる、暗黒大陸の環境に近い場所が点在していて、そのスポットでは妖魔は本来の全力を発揮することができるんです!」


「なんだって!? ってことは、まさかここがそのスポットなのか――?」


「本来は大陸の南部、暗黒大陸に近い場所に飛び地のように点在しているんですが、あの口ぶりから察するに、こんな離れた場所にもあるなんて――」


「それにしてもほんとめっちゃ詳しいな!? さすが全教科満点だけのことはある!」


「えへへ、ありがとうございます! ですので、気を付けてくださいね!」


「ああ! 詳しい説明をありがとうな!」

 ウヅキが《神焉竜(しんえんりゅう)》の背中の安全地帯に、サッと隠れたのを見届けると、俺は再びグレンに向き直った。


「話は済んだようだなマナシロ・セーヤ」

「待たせたな、悪い悪い。俺はちょっとお勉強不足でさ」


「構わんよ。そしておおむねその娘の言った通りだ。妖魔の中で最強と言われる鬼族の真の力――その中でも鬼神の如きと呼ばれ恐れられた《剣の魔将》グレンの力を、とくと見せてくれる――! 『固有神聖』《鬼力豪放(きりょくごうほう)》!」


 グレンの言葉と共に、その身体からメキメキと何かが壊れて再構築されるような音がし始め、水蒸気のような白い霧が体中から立ち昇ってゆく。


 そして白くけぶるその中心にいたのは、


「なっ、グレンの姿が、若返っていく――!?」


 人間でいうと25歳くらいの青年の姿となった、筋骨隆々でムッキムキの鬼の剣士だった。


「鬼細胞を極限まで活性化させることで身体を再構成し、身体能力を大幅に引き上げる『固有神聖』《鬼力豪放(きりょくごうほう)》。体力強化というシンプルがゆえに――」


 瞬間、グレンの姿が俺の視界から消え失せた――!


「く――っ!?」


 強烈な踏み込みから放たれた刺突を、知覚系S級チート『龍眼』によってぎりぎりのところで捉えた俺は、


「こんのぉぉぉおおおおおおおっっっっ!!」


 ギャギンッッ!!


 精霊剣クサナギで刺突をかろうじて弾くと、弾いた勢いを利用して飛び退り、グレンから軽く距離をとった。


「あっぶねぇ……!」


 『精霊融合エレメンタル・フュージョン』をしていても、どうにかぎりぎり反応するのでやっとの、神速の踏み込み。


「――シンプルがゆえに、対処も難しい」


 そしてこれが、


「《剣の魔将》グレン・クルボーの真の実力ってわけか――!」

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