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第355話 修学旅行気分~

「だめだ、寝れない……むくり」


 夜――というか未明。


 時刻は朝の2時をまわったくらいだ。

 時間系S級チート『体内時計』が、まるで時計でも見ているように、俺に正確な時間を教えてくれた。


 そんな草木も眠る丑三つ時にもかかわらず、俺は眠気を全く感じずに布団から身を起こしたのだった。


「はぁ、明日は……いやもう今日か。大事な一日になるっていうのに、完全に眼が冴えちゃったよ……」


 女の子が来てくれるのを待ちわびている間に、変なテンションで妄想を(こじ)らせちゃった俺は、完全に寝付けなくなっていたのだった。


 期待が膨らみすぎたところから、急転直下で悲しい現実を見せつけられてしまって、ストレスで自律神経が過敏に反応しちゃったのかもしれない。


「まったく寝られる気がしない。ちょっとその辺歩いて、クールダウンしてこよう……」


 俺は部屋を出ると、リフォームと増築によってまるで旅館のようになった新サクライ家を、音をたてないように気を使いながら歩いていった。


「もう夜も遅いからね。みんなを起こさないようにしないと」


 集団生活で一番大事なことは、一にも二にも他者への気遣いの心であるからして。

 細やかな気遣いのできる男、麻奈志漏(まなしろ)誠也であった。


「でもこうやって暗く静まり返った中を歩くと、印象が全然が違うな……明るいときは豪勢な宿って感じだったのが、今はゲームのダンジョンみたいだ……」


 ただまぁ新しいサクライ家がいくら広いと言っても、屋内は屋内だ。

 しばらくうろついていると、すぐに全部行き終えてしまった。


 そろそろ部屋に戻ろうかと思ったその時――、


「ん、あれ? 突き当りの部屋から灯りが漏れてる……あの部屋って確かティモテの部屋だったよな?」


 扉がわずかに開いている部屋があって、そこから光が漏れ出していたのを俺は発見した。


「こんな夜遅くまで起きてるのか。難しい本をいっぱい持ってきてたみたいだし、勉強でもしてるのかな? 偉いなぁ」


 ちょっとだけ覗いてみよう――あ、いや、様子をうかがってみよう――いやいや、そういうね、自室でくつろいでる女の子をのぞき見しよう、的な変な意味じゃなくてだな。


 せっかく起きてるんなら、ティモテと話でもしようかなと思ってさ。

 話しかけるタイミングを見計らおうとしたんだよ。


 でも、なんかちょっとドキドキしちゃうよね。


 夜に女の子とお話するってシチュエーションって、修学旅行の夜に抜け出して、気になる女子の部屋に遊びに行くイベント感があるっていうか。


 そこに見回りの先生が来ちゃって、

「やばっ! 誠也くんこっちきて! ぎゅっ!」


 それでその子の身体に抱き着くような形でお布団に隠れて。

 おっぱいにぎゅむっと顔をうずめちゃったりして。


 それで先生が次の部屋に行ったら、


「えへへ、危なかったね~」

 とか言って笑いあうんだよ。


 いいよなぁ修学旅行。

 人生最大のイベントの一つだよね、常識的に考えて。


 まぁ俺は修学旅行で女子の部屋に行ったことがないので、全部想像なんだけど。

 というか高校は男子校だったんで、女の子とのイベントが発生する余地すらなかったというか。


 修学旅行の一番の思い出と言えば、隣の部屋の奴らと大・枕投げ合戦をして、数十人規模で正座させられて、生活指導の先生&担任からこっぴどく説教を喰らったことだった。


 まぁそれはそれで一生に一度のいい思い出だったけどね。


 俺の修学旅行での恥ずかしい話は置いといてだ。

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