第36話 勝利の宴、ハヅキ
少し反省をしつつ、ウヅキが美味しそうに食べだしたのを眺めていると、
「まなしー、えび、むいて」
右隣に座っていたハヅキが、殻のついた甘エビを差しだしてきた。
ところどころ殻が剥けている、というかはぎ取られているところを見るに、殻むきに挑戦したもののうまくむけなかったようだ。
「お、いいぞ、ほら貸してみ」
「ん」
「まず頭は食べないから最初に外そう。で、お腹に足があるだろ? まずここをもいでから……こう、かぱっと一気に殻を外してやるんだ」
ハヅキの目の前で実演しながら、甘エビの頭をとって殻をむいてあげる。
「おーー!」
「はいどうぞ」
「ありがと!」
早速、甘エビにかぶりつくハヅキ。
「どうだ、おいしいか?」
「うん! すごく、あまい、びっくり」
「それは良かったな、今日はいっぱい好きなだけ食べていいんだからな。ほら、もう一個むいてあげよう」
「うにゅ、まなしー、ありがと」
もう1つ、さらに1つと剥いてあげると、ハヅキは手を汚しながら笑顔で甘エビにかぶりついていく。
うんうん、女の子が笑顔になるのはいいことだね。
なんかさ、娘、いや姪っ子かな。
ハヅキはそんな感じで色々と構ってあげたくなるんだよな。
しかもウヅキとよく似た顔立ちは数年後、超が付く美少女になることが約束されている訳で。
今はまだ、上に広く&下には狭い俺のストライクゾーンには入っていないけれど、大きくなってもこんな風に可愛く甘えてこられたら、とか想像するとそれだけでご飯3杯はいけるね……!
ウヅキとハヅキの美少女姉妹は、俺のハーレムにはマストで必要な人材だ。
この調子でいい関係を構築していこう。
「それにしてもセーヤさんはお酒もお強いんですね」
「まぁね。ところでさ、ちょっと気になってたんだけど、飲酒するのに法律での年齢制限ってないのかな?」
「なんでお酒を飲むのに法律がいるんですか?」
素で返されてしまった。
どうやらシュヴァインシュタイガー帝国には飲酒年齢を規定する法律はないようだった。
「あれだ、郷に入れば郷に従え、だよな。それに一応日本の法律的には俺って32才だし。うん、まったくもって完全に合法だ」
オッケー、自己完結した――はずだったのだが。
「いちおう大人の飲み物とはなっていますけどね。自分でどれだけなら飲んでも大丈夫なのか。それをちゃんと把握してそれ以上は飲まない、っていう判断ができるようになるのが大人になるってことですから」
「……ウン、ソウダヨネ。ウヅキノ、イウトオリダヨ」
酔いつぶれて前後不覚となり、いつの間にか死んじゃってて、しかもその記憶すらなかったどこかの誰かさんには、大変耳が痛いお言葉であった……。
「ふふっ、変なセーヤさん」
「ちょっとね、思うところがあってね……そういやウヅキはあまり飲めないのか?」
「実はわたしはお酒はまったくダメでして。苦いですし、昔一回舐めたことがあるんですけど、すぐに顔を真っ赤にして寝ちゃいまして。それ以来、お酒は飲まないことにしてるんです」
「美味しいのになぁ……もったいない」
「だったらちょうどいいです、セーヤさんがわたしの分までいっぱい飲んでくださいね。はい、もう一杯」
「おっ、ありがとう――あぁ美味い」
それにしても美少女のついでくれたお酒は、なんでこんなに美味しいんだろうか。
「うにゅ、ハヅキも、つぐ」
「お、さんきゅー。ゆっくりでいいからなー」
見よう見まねでお酒を注いでくれるハヅキは、これまた可愛いくてほっこりさせられて――。
その後は村人たちが感謝と賞賛を伝えるべく、入れ替わり立ち替わり俺の席までやってきては、
「マナシロさまのおかげで、今日はこんなうまい酒が飲めます」
「あの目にもとまらぬ天下無双の剣さばき、さては名のある武門の出では――」
なんて言って次から次へと酒を注いでくれるのだ。
本来なら完全に酔いつぶれる量だったんだけど、グルメ系S級チート『酒は飲んでも呑まれるな』によって、俺は絶妙なほろ酔い加減でとっても気持ちよくお酒を味わっていた。
「こんなに楽しくお酒を飲んだのって、いつ以来だ……? 上司に愚痴を聞かされることもないし、可愛い女の子にお酌してもらって、みんなから活躍を称賛されて……ああ! 異世界って本当に、最高オブ最高すぎるだろ……!」
「無敵転生」をお読みいただきありがとうございました。
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