第348話 精霊剣クサナギ
キンキンキンキンキンキンキンキン――!
精霊さんの力でブーストされて虹色に輝く精霊剣となった日本刀と、老鬼の剣とが、火花を散らして何度も激しくぶつかりあう。
「その剣すごいな。精霊さんパワーが乗った日本刀とこれだけ打ち合って、刃こぼれ一つしないなんて――さっ!」
「これは先代の魔王様より下賜された魔剣グリムヴェル。そう易々とは折られんよ――フンッ!」
「魔剣グリムヴェル……そっちはそっちで、いわくつきの剣ってことか――せりゃっ!」
キンキンキンキンキンキンキンキン――!
やりとりもそこそこに、俺とグレンはさらにさらにと切り結んでゆく。
「なんかほんと不思議な感じっていうか、初めてのパターンだよな。パワーで勝って、技術で負けてるってのは――」
精霊さんブーストなしではS級チートにすぎない『剣聖』と、SS級である《剣の魔将》グレン。
向こうの方が高ランクとはいえ、剣に特化した『剣聖』が剣技という技術面で後れをとるってのは、このグレンが初めての相手だ。
「でもま、俺は別に剣の道に生きてるわけでもないし? 要は勝てばいいんだよ、勝てば――!」
美しさすら感じるグレンの剣筋。
しかし俺は力で強引に魔剣を地面に叩き伏せると、間髪入れずに返す刀で鮮烈に斬り上げた――!
しかしグレンは瞬時の判断で魔剣グリムヴェルを手放して、バックステップ。
俺の剣先ギリギリを見切ってかわすと、即座に踏み込みなおして魔剣を掴み、強烈なカウンターを放ってきた――!
「くっ、この――うぉりゃ!」
起死回生を狙った激甚なる一撃をどうにか受け止めた俺は、またもや強引にグレンの魔剣を弾き飛ばすように押し返した。
さらにグレンの態勢が崩れた隙を逃さず、一気に距離を詰めてさらなる連続攻撃を仕掛けてゆく。
キンキンキンキンキンキンキンキン――!
再び激しく打ち鳴らされる日本刀と魔剣グリムヴェル。
俺の猛烈な波状攻撃を、それでもグレンは押されながらも、その巧みな剣技と体捌きによってしのいでみせる。
「こんの! あと一歩、崩せそうで崩しきれねぇ――っ!」
グレンは純粋な剣の技術だけで戦っている。
それで精霊さんのブーストを得て実質SS級となった俺と、ここまで渡り合うなんてな――!
「さすが、《剣の魔将》と呼ばれるだけのことはあるな――! はぁぁぁっ!!」
「貴様こそ、まさかこんな手を用意していたとはな――ぐぅっ!」
俺の重い一撃をもろに受け止めたグレンが、歯を食いしばる。
「あんたこそこれだけパワーの差がある中でよく粘るじゃないか。もうちょっとで落とせそうなのに、落としきれない。これ以上無理に行くと手痛いしっぺ返しを喰らいそうな、いやーな雰囲気でいっぱいだぜ?」
だけどもう、そいつも時間の問題だ――!
わずかだがグレンの防御がほころびはじめ、日本刀の刃は次第次第にその身体をとらえ始めている――!
「ただま、言わせてもらうなら、SS級の割には大したことない――かな?」
今まで戦ってきたSS級たち。
《神焉竜》、《シュプリームウルフ》、トワ=《スサノオ》、《精霊神竜》と比べれば、グレンの力は1枚も2枚も格が落ちる――!
「S級だった時ならまだしも、SS級となった今。お前はもう俺の敵じゃねぇ――!」