第347話 精霊融合 ―エレメンタル・フュージョンー
「まさか《神滅覇王》であるだけでなく、最高位の精霊を使役しているとはな」
「精霊さんが出てきちゃった以上、隠してもしょうがないか。ま、そういうこと――」
「ちょっとアンタどこ見てんのよ! ぜんぜん使役されてないし! アタシら対等だし! むしろアタシが力を貸してあげてるんだけど?」
精霊さんが、今度は俺の言葉にかぶせるようにしゃしゃり出てきた。
「あーもう分かったから、わかったからね、精霊さんはちょっと黙ってて! 精霊さんが口を出すと、話が進まないでしょ? ね、後の話は俺がするから――」
「つまり今のは高位精霊の力を上乗せした一撃だったというわけだ」
納得したといった感のグレンに、
「ふっふーん! 《精霊神竜》たるアタシほどのキング・オブ・高位精霊ともなれば、これくらいたやすいのである!」
超どや顔の精霊さん。
「だからなんで二人で勝手に話を進めてんの!? 少しは俺の意見も尊重してよねっ!?」
「しかし《神滅覇王》に続いて、《精霊神竜》だと……?」
ほらもう、精霊さんのせいで相手にいらん情報を与えちゃってからに……。
「ま、この際だからぶっちゃけると《神滅覇王》は最後の切り札だからな。温存しておくに越したことはないってわけさ」
《神滅覇王》は圧倒的な強さを誇る代わりに、その分だけ消耗も激しい。
勝負に行くとき以外はやや使いづらいというか。
――そういう感じの話を、実は昨日の晩ご飯の時にちらっとしたら、巫女エルフちゃんが、
「それでしたらはおー流強化術フュージョンですねー。転移術の応用で二人の力の位相を重ねるんですー」
と言って俺と精霊さんの力の波長が重なるようにと、チューニングしてくれたのだった。
「精霊はエネルギー生命体なので、そこまで難しくはないですよー。お二人の全力時の力の波形も見てますしー。それにアストラル界では超大すぎる精霊力も、物質世界では5分の1ほどに出力が抑えられますからー」
ロボットものによく出てくる、量産型から主人公専用の新型機までなんでもござれで整備しちゃう熟練のベテラン整備員みたいな、かゆいところに手が届く系女子な巫女エルフちゃんだった。
さすがSS級の転移術を使いこなすだけはあるね。
――とまぁ、そんなことがあって。
「今の俺は精霊さんの――《精霊神竜》の力を上乗せして、実質SS級のパワーがあるスーパー麻奈志漏誠也ってわけだ。昨日みたいには簡単にはいかないぜ?」
戦意をたぎらせてゆく俺の言葉にあわせるように、精霊さんが頭の横まですいーっと飛んで近づいてくる。
「じゃあ行くわよマナシロ・セーヤ! 失敗はなしだかんね! とうっ! 精霊融合! エレメンタル・フュージョン!」
ピカーン!
精霊さんはひときわ大きな七色の光――《精霊神竜》の放つ虹色の極光だ――を放つと、光の粒子そのものとなって俺の中へと吸い込まれていく――!
同時に、俺の身体の中に精霊さんの膨大な精霊力がみなぎりはじめた――!
「――とまぁこういうわけでさ」
身体から七色のオーラ――《精霊神竜》の力だ――を漂わせて、
「さて《剣の魔将》グレン。リベンジマッチといこうじゃないか――」
精霊力でブーストされて七色に輝く日本刀――精霊剣クサナギの切っ先をグレンに向けると、俺はニヤリと不敵に笑ってみせた。