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第332話 天然+天然=温泉ティモテ

 その夜。


 ウヅキを中心とした女の子有志連合プレゼンツによる、盛大なティモテ歓迎会が行われたのち。


 俺は一人、サクライ家の温泉に浸かっていた。


「ああ……いい湯だな……ほんと生き返る……」


 口から自然と漏れでた弛緩しきった声は、誰が聞くでもなく露天風呂の夜空へと吸い込まれるように消えてゆく。


 完全にリラックスモードで温泉を満喫しながら、俺は激動の今日という日を思い返していた。


 いやまぁ異世界転生して半月。

 激動じゃない一日を送った覚えが、なかったりはするんだけれども。


 それはそれとして。


 まずはティモテと出会って見とれてしまったのが始まりだった。

 そしたら咥えこんだ肉棒からティモテのお顔に濃厚な液体がびゅっびゅっしちゃって。


 《剣の魔将》グレンに襲撃されて。

 しかもまたもやSS級の強さで、あわや負けそうになって。


 どうにか撃退したと思ったら、ナイアから魔王復活とかいう話が出てきて。


 さらには大公になってと言われて。

 そんなこと急に言われても……って頭を抱えていたら、仲間(ファミリー)のサーシャが、トラヴィス商会のサポートを確約してくれて。


「ま、神輿は軽い方がいいって言うもんな……」


 えーと、なんで軽い方がいいんだったっけかな?

 ま、ことわざになるくらいだから、トップに立つ人間は軽い方がいいんだろ。


 とまぁそんな感じで、相も変わらず落ち着く気配を見せない俺の異世界生活だけれど、


「少なくとも、この極上の温泉につかっている間は、面倒くさいことを全部するっとまるっと忘れていられるよ……」


 俺がだらしなーく足を投げ出して、口を半開きにしアホ面をさらしながら、お湯に身をゆだねていると――、


「失礼します――」


 脱衣所のとびらが開く音がしたかと思うと、女の子が一人、こちらへと近づいてきたのだった。


 タオルで大事なところを隠しながら、おずおずとおっかなびっくり入ってきた女の子は――、


「あ、今日の温泉ガールはティモテなのか――じゃねぇよ!? なんでティモテが温泉に!?」


 それはないでしょ!?


 だって既に仲良くなった他の女の子たちならいざ知らず、ティモテは今日会ったばかりだよ?


 それともこの世界の女の子はこれが普通なの?

 実はこの異世界って、出会ったその日に男女が普通に一緒にお風呂で混浴しちゃう異世界なの!?


 なにそれ素敵すぎるんですけど!?


「その、ウヅキさんに『今ちょうどセーヤさんが入ってるからどうぞ』と言われまして」


「う、ウヅキ……」


 君はいったいなにを言ってるんだい?

 なにがどう『どうぞ』なんだ?


 まず間違いなく親切心(?)なんだよね??


「いやいやウヅキどうこう以前に、ティモテが拒否すればよかったんじゃ……」


 しごく当たり前の結論はしかし、


「ウヅキさんはこの家のホストですし、東の辺境ではそういう文化があるのかなと思いまして。郷に入れば郷に従えと言います。自分の勉強不足を恥じつつ、勇気を出して混浴しにきてみたのですが――」


「さすがに裸でコミュニケーションなお風呂文化はないんじゃないかなぁ……いや俺も来て日が浅いから確信はないんだけど」


「ですよね……」


 そう言ったティモテの頬が、みるみる朱に染まってゆく。

 今更になって恥ずかしさが猛烈な勢いで込みあげてきたようだった。


 そりゃまぁそうだ。

 普通は出会ったその日に異性に裸をさらしたりはしないもの。


 身体を隠すためのタオルをつかんでいたティモテの手に、ぎゅっと力が入ったのが見て取れた。


 つまりこういうことか。


 ウヅキとティモテ、よく似た真面目タイプの天然さんが2人いた。


 そして似た者同士で話をしたところ、天然ボケを真に受けちゃって結果大変なことになってしまった、と。


「ううっ、どうやらすべては私の勘違いだったようです。おくつろぎの時間をお邪魔してしまい、申し訳ありませんでした。私はこのまま上がりますので――」


 そう言って温泉を後にしようとするティモテを、


「えーと、別に邪魔じゃないよ? うん、全然邪魔じゃないから」


 俺は思わず引き留めてしまったのだった――。

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