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第329話 くっ、俺としたことがんな大事なことを見落としていたとは……!

「セーヤ、ちょっと話をいいかな?」

「どうしたナイア?」


 『《剣の魔将》グレン緊急対策会議』が終わり、みんなが晩御飯の用意や現場監督、お絵かきに戻っていったあと。

 最後に俺も出ていこうとしたところで、俺はナイアに呼び止められたのだった。


「話ってのはグレンのことなんだけどね」


 この口ぶりから察するに、さっきまで話をしていた《剣の魔将》グレンについて、俺にだけ聞かせたい話があるってことか。


 「まだ確証が薄い」話か、もしくは「誰かに聞かせたくない」話なんだろう。


「気のせいかもしれないんだけどさ。グレンが去り際にティモテを見た気がしたんだよね」


「あ、それナイアも思った?」

「――ってことは、セーヤも感じたんだね?」


 あれは、なんていえばいいのかな。


 野次馬を嫌ってグレンが撤退するときに、


「ティモテのことを値踏みするような、いや確認するような? まぁそんな視線を一瞬送った気がした気が、俺もしたんだ」


「……ふむ。そうすると、あながちアタイの思い違いってわけでもないかもしれないね」

「その言い方から察するに、ナイアはグレンの目的について当てがあるのか?」


「当てがあるってほど確かでもないし、無関係に越したことはないんだけどさ。でもタイミング的にティモテが目的の可能性はあるかもしれない」


 声を潜めるようにトーンを落とすと、真剣な顔をしてナイアは告げる。


 って、ああ。

 つまりこれはティモテに聞かせたくない話だったってわけか。


 まだ不確かに過ぎる段階なのに、自分が狙われているかもしれないって必要以上に不安にさせちゃうのは、可哀そうだもんな。


「それで、その可能性っていうのは?」


「ティモテはさ、帝国臣民の8割が信奉し、大陸中に信徒を抱えるマリア=セレシア教会の未来の教皇候補だ」


「……そうやって改めて聞くと、ほんとすごいな」


 帝国だけでなく大陸中に信徒を抱えるマリア=セレシア教会のトップともなると、もはや皇帝よりもすごいんじゃないか……?


「ほんと凄いんだよね、実際。そしていざ魔王が復活して人間と妖魔の戦争が始まった時、うら若き教皇が人間側の団結の象徴となることは、これはもう間違いがないことだ」


「――そうか! だから今のうちに、ティモテを亡き者にしようと乗り込んできたってことか!」


 おお、見事に話が繋がったぞ!


 魔王復活の兆し → 陽動で挙兵 → グレンが乗り込んでくる → ティモテを暗殺


 まるで推理ものドラマの登場人物になったみたいだよ!


 あ、そうだ!


「《神滅覇王(しんめつはおう)》の名にかけて!」


 ――みたいなカッコイイ決めゼリフを用意しておくべきだったな。

 くっ、俺としたことがこんな大事なことを見落としていたとは、なんという失態……! 


「もちろんまだ断定はできないし証拠もない。けどその可能性だけ、セーヤの心にとめておいてほしいと思ってね――」


「……」


 でもこのセリフはさすがに安直すぎるな。

 なにせ異世界転生した俺は、全チートフル装備の圧倒的主人公なんだ。


「――セーヤ?」


「……」


 やはりここはパクリではなく、そんなパーフェクトな俺に相応しい、パーフェクトな俺だけの決めゼリフとして、確固たるオリジナリティを追求したいところだ。


「――セーヤ?」


「……え? あ、いやいや聞いてたよ? うん、聞いてた!」


 いかんいかん。

 カッコいいセリフを考えることに少し没頭しすぎてしまったようだ

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