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第323話 《剣の魔将》

「『剣聖』最強の奥義、《紫電一閃(しでんいっせん)》が、打ち負けた……!?」


 最強S級チートである『剣聖』の奥義が打ち負ける。

 それは即ち――、


「間違いない、こいつS級じゃなくてSS級だ――!!」

 ――ということに他ならない!


「くっそ、またかよ!? またSS級なのかよ!? いい加減にしろよな!?」


 いや、今は嘆いていても始まらない。

 まずは目の前のこいつをどうにかすること、それに全力を傾けないと――!


 SS級が相手ってことは、

「こっちもSS級チート《神滅覇王(しんめつはおう)》を使うしかない――!」


 俺が切り札を――《神滅覇王(しんめつはおう)》を顕現させようとした時だった。


「……興が乗りすぎて少々時間をかけすぎたか」


 言うと、老鬼(ろうき)は大きく飛び退って、そのままあっさりと剣を鞘へと納めた。


 相対するだけでヒリつくような凄みを感じる鬼気迫る闘気が、一瞬で霧散してゆく。

 いやまぁ鬼気迫るっていうか、文字通り鬼なんだけども。


 それにしても、やけにあっさりと戦闘放棄したな……?


「野次馬が集まってきたのを気にしている……? 目立ちたくない、のか……?」


 戦場から少し離れた場所には既に、何が起こってるのかと見物に来た野次馬が増え始めていた。

 ちょうどお昼時で、作業が中断する時間帯なのもあるだろう。


「つまりこいつは、なんらかの隠密行動中ってことか……?」

 あまりに簡単に戦いをやめたことに疑問を感じていた俺に、


「人族の若き剣士よ、名は何という?」

 老鬼(ろうき)はいきなりそんなことを聞いてきた。


「おいおい、他人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗れって、親から習わなかったのか?」 


 敵に情報を与えてもいいことは一つもないよな。

 そう思って、俺はちょい煽り目に言葉を返してみたんだけど、


「これは礼を失したようだ、詫びよう。我が名はグレン。《(つるぎ)の魔将》グレン・クルボー」

 なんか丁寧に謝られちゃった上に、普通に自己紹介されちゃったんだけど……?


 あんた妖魔なんだろ?

 調子狂うな、もう。


 しかもなんかやたらとカッコイイ『二つ名』がついてるし。


 なんだよ《(つるぎ)の魔将》って。

 カッコよすぎだろ常識的に考えて。


 だがまぁしかしだよ?


 名乗られた以上は、名乗り返さなければなるまいて……!

 なるまいて……!

 礼儀として……!!


 こほん――。


「俺の名は麻奈志漏(まなしろ)誠也! 《神滅覇王(しんめつはおう)》にして《王竜を退けし者(ドラゴンスレイヤー)》の麻奈志漏(まなしろ)誠也だ!」


 俺はどや顔でそう言った。

 特に『二つ名』のところを強調して言った。


 目には目を、歯には歯を、二つ名には二つ名で対抗するのが俺のスタイルだ!


「《神滅覇王(しんめつはおう)》――! どうりで……。《神滅覇王(しんめつはおう)》マナシロ・セーヤ。その名、覚えておこう」


 そう言うだけ言うと、老鬼(ろうき)はさっと踵を返した。

 大胆不敵にも無防備に背中を見せて去ってゆく。


「っておい、逃げる気か――!」


女子(おなご)もいる。逸らずに、今日はここいらで手打ちにしておけ」


 振り返らずにそう言いながら、老鬼(ろうき)は流れるような無駄のない動作でマントを拾い上げると、そのまま南方大森林の中へと消えていった。


 ん?

 あれ?


 去り際に一瞬、《(つるぎ)の魔将》グレンがティモテを見たような気がしたような?

 しないような?


 まぁ気のせいか。

 単にたまたま目に留まっただけな可能性もあるしな。


 可愛い女の子をついつい観察しちゃうこと、あると思います。


 老鬼(ろうき)が去ったことで知覚系S級チート『龍眼』も静かになり、『剣聖』が戦闘モードから待機モードへと移行する。


「ふぅ――」

 そうして張りつめていた緊張が解け、やっと俺は大きく一息ついたのだった。


 そしてこれが。

 《剣の魔将》と呼ばれる老鬼(ろうき)グレン・クルボーとの、邂逅と初戦だった。

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