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第322話 鬼と出遭う

「ひ――っ」

 額のツノを見たティモテが息を飲み、


「妖魔、それも最強と名高い鬼族か!」

 ナイアが緊張に満ち満ちた硬い声を上げた。


 ツノがあって人とよく似た姿をした妖魔――『鬼』。

 転生前でも最強の代名詞だった伝説の超越的存在――それがいるんだな、この異世界に。


 しかもこの鬼、相当な手練れだぞ……!


「ふむ、そんなつもりはなかったが、なかなかどうして。小僧、見かけによらず、いい腕をしているな。少々、揉んでやるとするかの」


 言って老人――いや老鬼(ろうき)は、つばぜり合いを自分有利な態勢で押し解くと、そのまま剣をふるい始めた――!


 キンキンキンキンキンキンキンキン!


 目にもとまらぬスピードで、激しく打ち合う俺と老鬼(ろうき)

 純粋な剣術での勝負で、最強S級チート『剣聖』が負けるはずはない――そう思っていたんだけれど――、


「なっ、互角――ウソだろ!?」


 『剣聖』を使っているにもかかわらず、しかも混じりっけなしの剣の勝負だというのに。

 俺と老鬼(ろうき)は、一進一退の苛烈な攻防を繰り広げていたのだった。


 老鬼(ろうき)の攻撃を受け流しつつ、即座にカウンターの横なぎを入れる――しかしその狙いすました一撃を、最低限の体捌きだけでなんなく交わした老鬼(ろうき)は、再び俺に鮮烈な一撃を放ってくる――!


「こなくそ――っ!」


 それを俺もぎりぎりで受け流し、わずかの隙を見つけて反転攻勢をかけ――しかしそれは老鬼(ろうき)の誘いで、うまくカウンターを合わせられてまた防戦に――。


 打ち合い。

 かわし合い。

 受け流しあい。


 苛烈に攻め合いながらもしかし、互いに決定打を得られないその戦いは――、


「不謹慎かもしれませんが、これはまるで美しい演武を見ているようです――」

 そんなティモテのつぶやきは、これ以上なく的を射ていた。


 今日も今日とて、最強S級チートの名に恥じない芸術的な剣の冴えを見せる『剣聖』の絶技。


 加えて知覚系S級チート『龍眼』が、老鬼(ろうき)の動き・技を解析し丸裸にしてゆく。

 この2つのコンビネーションは、SS級に限りなく近い最強シナジーのはずなのに――!


 老鬼(ろうき)の剣の技ときたら、その俺と同等(タメ)か、下手したら俺を上回っていたのだから――!


 そのまま、一瞬で攻守を入れ替えながら、休む間もなく刹那の攻防を繰り広げる中――、


「ぐぅ――っ!」


 俺はほんのわずか、態勢を崩してしまった。


 そこに老鬼(ろうき)がここぞとばかりに鋭く踏み込んできて――、


「かかった――!」

 俺はニヤリとわずかに口角をあげた。


 既に日本刀(クサナギ)は納刀している――!

 

「世界よ、真白(ましろ)(またた)け――」

 それは戦闘系S級チート『剣聖』が誇る最終奥義――!


「嵌められたか、ふん、ちょこざいな――!」

 今度は自分が誘いこまれたと知った老鬼(ろうき)が、その場で迎撃態勢をとるけれど――、


「もう(おせ)ぇ――!」


 抜刀とともに爆発的に解放された剣気が、光輝(ひかり)となって(きら)めいて――!


「剣気解放――! 《紫電一閃(しでんいっせん)》!!」


 雷光と見まごうばかりの峻烈なる一撃が、気合いとともに抜刀術で解き放たれる――!


「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!」


 キィィィィィィィィ――――――――――ンンッッ!

 甲高い音が一鳴りして。


 全身全霊を込めて打ち放った《紫電一閃(しでんいっせん)》は――しかし。


「なん……だと……?」


 老鬼(ろうき)の強烈な叩きつけによって、打ち返されてしまったのだった――!

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