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第321話 襲撃

「それにしてもセーヤとティモテが知り合いだったとはね」

「知り合いっていうか、今日たまたま教会を見に行ったらそこで会ってさ――」


「つまり速攻ナンパしたというわけですね」

 これまでずっと黙っていたクリスさんから、狙いすましたような強烈な横やりが入った。


「いやあの別にナンパしたわけでは……」

「では違うと? ナンパではないと? では一体どういった目的で、見知らぬ女の子に声をかけたのでしょうか?」


「それはその、ティモテのなんだか儚げな雰囲気がですね、ちょっとこう、気になって思わずご飯に誘ってしまったというか……」


「つまりナンパですね」

「あ、はい。そうです」

 哀れ、クリスさんに一瞬で攻め落とされたマナシロ城に、


「あの、どちらかというと私の方からお誘いしたような形ででして――」

 援軍を送ってくれたのはティモテだった。


「ううっ、ティモテは本当にいい子だよ……さすがは聖母マリアの再来だ……」


 とまぁそんな感じで。

 もうしばらく女の子に囲まれて楽しくお話をする雰囲気――そう思っていた時だった。


「――っ!」

 俺の右目が妖しく煌めくとともに、知覚系S級チート『龍眼』発動したのは――!


 さらには激しくアラートする『龍眼』と連動して、最強S級チート『剣聖』が待機モードをすっとばしていきなり戦闘モードで発動する。


 それもそのはず――。


「なんだこの異様な気配……!」

 それは街のすぐ外まで近づいていて――シロガネの警戒網をかいくぐってきたのか!


『みんな、ここにいて絶対に動くんじゃないぞ――』


 俺はそう指示を出そうとして、ふと俺の近くの方が安全かもということに思いいたる。

 少なくとも目に見える範囲にいてくれたら、いくらだって守ってあげられるし、今のメンバーはティモテを除けば戦闘に長けたナイアやクリスさん、SS級の精霊さんもいる。


「セーヤ?」

「マナシロさん?」

「マナシロ様、急にどうされたのですか?」


 今は悩んでいる暇はないか。


「どうも招かれざる客がやってきたみたいだ。街の入り口のすぐ傍まで来てる。カタギじゃないっぽいし、街に入る前にお引き取り願わないとな。ってことで、みんな俺についてきてくれないか?」


 そうして俺たちが入り口まで行くと、そこには真っ黒のマントと、同じく真っ黒のフードを目深にかぶった怪しげなヤツが一人、突っ立つっていた。

 背丈は俺と同じか、やや高いくらいだろうか?


 どうやら向こうも、俺の存在に気が付いてこうやって待ち構えていたみたいだな。


「えーっと、そこの不審人物さん。この街に何か用でも?」


 声をかけてみたものの、しかしまったく反応はない。


「とりあえずフードを上げてくれないかな? 現状どう見てもお巡りさんに通報案件なんだけど」


 ようやっとフードをあげた不審人物は、しかし――、


「フッ――」


 そのままマントを脱ぎ捨て、腰の剣を抜刀すると、俺のもとへと瞬時に距離を詰めて斬りこんできたのだ――!


「問答無用かよ――! このっ!」


 空気を切り裂くような鋭い初撃を、


 ギン――ッ!


 鈍い音とともに、俺は居合抜きした日本刀(クサナギ)でギリッギリのところで受け止めた――!


「くぅ――っっ!」

「ほぅ、今のをあっさりと受け止めるか。やりおるな、人族の若者よ」


 そう言った不審人物は――浅黒い肌をした老人――いやそんなことよりもなによりも、著しく目を引いたのは――、


「ツノ――?」


 その額には小さな、しかしはっきりとソレとわかる一本のツノが生えていたのだ――!

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