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第319話 聖母マリアの再来

「おや?」 そこにいるのはティモテかい?」


 俺の斜め後ろ、俺を立ててくれるかのように一歩引いた位置で待機していたティモテを見たナイアが、


「久しぶりだね、去年の太陽祭以来かな?」


 ちょっと嬉しそうな感じで声をかけた。


「ナイア・ドラクロワ卿、ご無沙汰しております。その節は多大なご支援を賜りまして、誠にありがとうございました」


 それに対して、丁寧にぺこりと頭を下げて答えるティモテ。


「あはは、あれくらい気にすることはないさ。うーん、でもやっぱり“卿”はやめてほしいかな? こう背中がかゆくなっちゃう。いろいろうるさい帝都と違って、ここじゃ別に誰が見とがめるわけでもないんだ。ナイアでいいさ」


「相変わらずですね。お元気そうでなによりです、ナイア」

「そういうティモテは……ふむ、なんだか顔がつやつやしてる気がするかな?」


「これはですね――」

 ティモテが説明しようとした矢先、


「呼ばれて飛び出て、アタシ参上!」

 会話を弾ませている2人に、精霊さんが平然と割って入った。


 こんな会話が花咲いている中に初対面で突っ込めちゃう、その半端ない空気の読めなさがちょっと羨ましいです。


「精霊……? どうしてこんなところに……?」

 精霊さんを見て、さすがのナイアも驚いたようだ。


「この方はですね――」

「ふふん、みなまで言うなティモテ! アタシはね、精霊の中の精霊、つまりは精霊の王たる偉大なる《精霊神竜》よ!」


 そう言ってべらべらと自己紹介を始めた精霊さん。

 創世神話がどうのこうのから話だして、うん、長くなりそうだから精霊さんは放っておこう。


「っていうか、あれ? ナイアとティモテ、2人は知り合いだったの?」

 俺は精霊さんを華麗にスルーすると、ちょっと気になったことを聞いてみた。


「はい。昨年の太陽祭――マリア=セレシアの生誕祭に《聖処女騎士団(ジャンヌ・ダルク)》が警備に来てくれたんですが――」

「その時に少し話す機会があってね」


「ですが、本当に少し話をしただけだったのに、顔と名前を覚えてもらえたとは思いませんでした」


 ああそっか、ナイアは有名人だもんな。

 顔と名前を覚えてもらったとあって、ティモテはとても嬉しそうだった。


「ま、取り締まったり警備したりする職業柄、人の顔と名前を覚えるのは得意だからね。それにティモテは聖母マリアの再来とも評されるほどのできた人間だ。仲良くしたいと思うのは普通のことだよ」


 そうだよなぁ。

 俺のことも一発で信じてくれたし、あんなに一心不乱にお祈りしているのを見たら、誰だって好感を抱く――、


「――って、聖母マリアの再来!? マジか!」


「それはその、そういう風に呼ぶ方もいるというだけです。ほんと、私はそんなできた人間ではないですから。献身と社会貢献にその一生を捧げた慈愛の聖母マリアと比べられるなんて、とても畏れ多いです」


「――というような誠実な人柄なのさ」

「ああうん、いろいろ納得だ」


 俺とナイアからダブルで褒め褒めされて、申し訳なさそうに縮こまるティモテは、


「くっ、なんて守ってあげたくなる系女子なんだ……」

 それはもう可愛くて可愛くて、俺の心はマッハで胸キュンしちゃったのだった。

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