第307話 姉妹神焉竜幼女巫女エルフ精霊天狼お嬢さま温泉
その夜。
いまや高級旅館並みのハイクオリティ宿泊施設となったサクライ家に、みんなの部屋を割り当てて。
ウヅキが保存食(俺が大活躍してナイアからもらったやつだよ!)を利用してちゃちゃっと晩御飯を作ってくれて、それをみんなで食べて人心地着いた後。
「あー……温泉はやっぱ最高だな……日本人には遺伝子レベルでそれが刻み込まれてるよ……」
俺はサクライ家の誇る天然温泉に肩まで浸かって、全身をだらーっと弛緩させていた。
しかもだよ。
ここもサーシャによって大幅にリニューアルが施されていて、
「露天風呂を併設した大浴場……これ完全に高級旅館のそれだよな」
脱衣場やらの屋内施設が大掛かりに整備され、快適さを大きく増したこのサクライ家温泉は――、
「もはや天国……俺の異世界転生は、実は温泉転生だったのか……温泉マスターに俺はなる……」
ってな感じで、俺は完全にリラックスモード。
そこへ、
「セーヤさん、お邪魔します……」
恥ずかしそうに前を隠しながらなウヅキと、
「うにゅ、ここも、みちがえた」
全方位フルオープンできょろきょろ見渡しているハヅキと、
「すごい施設ですね……本当にタダで使ってもよいのでしょうか?」
最後におずおずとおっかなびっくりなトワがやってきた。
またもや発生した嬉し恥ずかしな異世界混浴温泉イベント!
しかしもはや、俺はそんなことでは驚きはしないのだった!
温泉に入ると混浴なのがもはや当たり前になりすぎて、「あ、やっと女の子がきたよ」くらいにしか思わない俺がいるというか。
ありがとう異世界転生!
ありがとう異世界温泉!
俺は今モーレツにリア充です!
さらにはサーシャとシロガネもやってきて、女の子は総勢5人となる。
一気に俺の周囲が、華やいだ肌色空間へと変貌を遂げたのだった。
「ふふふ、見たか、これが俺の異世界ハーレム温泉だ……!」
キリッ!!
そして――事件は起こった。
「おくれちゃいましたー」
最後の最後で、新たなる温泉フレンズこと巫女エルフちゃんが、俺のハーレム温泉へとやってきたのだ。
巫女エルフちゃんは半端なくゆっさゆさしていた。
……ゆっさゆさ……ゆっさゆさ……ゆっさ――、
「――はっ!? 今、俺は忘我の境地にいたよ!? 大いなる世界の真理にたどりついて、悟りを開いちゃいそうだったよ!?」
だがしかし、これを見るなという方が無理な話ではないだろうか?
むしろかたずを飲んで見守ることこそが、紳士のたしなみなのではないか!?
そんな、巫女エルフちゃんに見とれていた俺に、
「アンタなにぼーっとしてんのよ? 温泉でのぼせちゃったの? アタシの水系精霊術で冷やしてあげよっか?」
巫女エルフちゃんのすぐ後ろにふよふよ~っと浮いていた精霊さんが、声をかけてきた。
「ふふん、アタシ参上!」
こっちも裸なところを見ると、精霊さんも温泉に入るのかな?
頭には精霊さんサイズのミニタオルを乗っけている。
「精霊さんはエネルギー生命体って言ってたと思うんだけど、温泉に入って効果はあるんだろうか……?」
ふと疑問に思ったので聞いてみたら、
「こういうのは気分が大事なのよね! プラシーボ効果ってやつ! あとみんながワイワイ楽しそうにしてるのに、アタシだけのけ者にされると悲しい!」
「ああそう……そんなこったろうとは思ったけど……」
まぁ精霊さんも女の子っぽいし、顔も可愛いし、全然オッケーなんだけどね?
気が付くと、回復系S級チート『姉妹とお嬢さまと幼女と竜と狼とエルフと精霊と混浴』が発動していた。
「……あのさ? この混浴シリーズのチートってさ? 状況にあわせてチートが自動生成されてない? ここまでくるとさすがに予見可能性ゼロでしょ??」
いやいいんだけどね?
女の子が増えるごとに回復量も増加してるし?
異世界混浴温泉で身も心もハッピーだし?
ただちょーっとだけアレって思ったっていうか。