第306話 俺そういうメンドクサイことは、できればノーサンキューなんだけど……
とまぁ、肖像画の話はこれで一件落着として、話をリニューアルしたサクライ家に戻そう。
「ほんと凄いな、今日からここで生活するって思うと、俺ちょっとワクワクしてきたんだけど」
修学旅行でお泊りする時の気分が近いだろうか?
「わたしもちょっとドキドキです」
「ハヅキも……!」
ウヅキもハヅキも嬉しそうで、うん、なによりだ。
「ふふっ、一般的なおもてなし様式に、ワビ・サビという最新の美術様式を一部取り入れてみましたの。それをうちのお抱え職人が丁寧に仕上げしたものですわ。なかなかのものでしょう?」
「本当にありがたいんですけど、でもその、いいんでしょうか……?」
ウヅキが聞きたいのはつまり、金銭面のことに違いない。
「費用はこちらでもちますのでご安心くださいですの。生活環境が大きく変わる村の住人の方々には格別の配慮をしてしかるべきですし、セーヤ様の住まいともなれば、これからは相応の見栄えも必要になるはずですわ」
「え? そうなの?」
「ここは《神滅覇王》マナシロ・セーヤの屋敷・本拠になりますので。有力者との会合なども、ここで行うのがよいかと存じますの」
「ええ、なにそれ……聞くからにめんどくさそうなんだけど……」
「セーヤ様は今や帝都にもその名を知られる『東の辺境』で一番の有名人ですもの。ワンマンアーミーたる《神滅覇王》の強大すぎる軍事力は、当然、政治的にも無視できないものになっておりますわ」
「えぇぇぇぇ……」
いや本気で、えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………!!??
「ワンマンアーミー! さすがです、セーヤさん!」
ウヅキはそう言うし、
「はおー! はおー!」
ゆっさーゆっさー、ぷるんーぷるんー。
巫女エルフちゃんもいつもの応援で、俺を楽しませてくれるんだけどさ?
「俺そういう政治とかメンドクサイことは、できればノーサンキューなんだけど……」
政治家とかの偉い人と会って話すよりも、俺のことを好いてくれる女の子と、
「もう、誠也くんのえっち……。こういうのするの、誠也くんとだけなんだからね……?」
とかなんとか、きゃっきゃうふふ&にゃんにゃんにゃにゃにゃしたいです!
「セーヤ様が世俗のあれこれに興味がないことは、わたくしもよくよく存じておりますの。当然、トラヴィス商会は最大限のサポートをお約束いたしますので。それに私たちは婚約者ですもの!」
「おお、なんという力強い言葉……」
仲間、ほんといい言葉だな……!!
うん決めた、その辺のめんどいことはトラヴィス商会に基本丸投げしよう!
おっちゃん(サーシャのお父さん、トラヴィスの当主ね)もサーシャも、あとまぁクリスさんも信用に値する人だし。
ちなみにハヅキはというと、俺たちが子供にとっては割とどうでもいい話をしていたからか、
「ふかふか、すごい!」
玄関に入ってすぐ奥に置いてあったソファーで、トワ&シロガネと3人で一緒に立ったり座ったりをして、その品質の良さに目を白黒させていた。
使い倒して中綿がなくなり、布みたいになった薄っぺらい座布団を使っていたハヅキからしてみれば、このソファーの極上ふかふか具合はもはや未知との遭遇だもんな。
天才キッズといえど、まだまだ幼女である。
子供らしい姿にほっこりする俺だった。
というか面倒くさい話は聞かなかったことにして、俺もあっち側で幼女たちと戯れたいです……。