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第304話 ふふっ、セーヤ様が喜ぶかと思いまして

「これって石庭、っていうんだよな……?」


 綺麗に砂利が敷かれ、趣ある低木が植わわり――だけでなくがところどこに杉苔の群生も配置された日本庭園がそこにはあった。


 「ししおどし」のかぽーん! という音が遠くに聞こえているのも、とても風流だ。

 

 明らかに芸術的意図をもって整備された、風情のある庭園と玄関口。


 見た瞬間におおっ!って感じるのと、あと玄関の屋根がさ、前にぐっと張り出してて雨を防げる広めのスペースになっててさ。

 これがこれ以上なく旅館っぽいんだよ。


「屋敷の基礎的な作りはしっかりとしておりましたので、少し手を入れるだけでよかったのですわ」


 なんてサーシャは言うんだけれど。

「短期間でよくこれだけ仕上げたな……」


 大きいだけの古民家を、風情のあるお屋敷――というかもはや高級旅館へとわずか数日で作り替えてみせたトラヴィス商会の底力に、驚きを隠せない俺だった。


 もちろん綺麗にリニューアルされたのは外観だけではない。


 玄関を入ってすぐも広々と開放的なロビーになっていて――そして、そこで事件は起こった。


「床板も張り替えられてますし、すごく落ち着いた内装です……あ、ハヅキの描いた絵が飾ってあります」

 ウヅキが指さした先には、一枚の絵が飾ってあった。


「へー、わざわざ額縁に入れてくれたのか。でもこうやって額縁に入ったのを見ると、一気に『絵画』っぽくなるよな。ははっ、よかったなハヅキ」

「うにゅ!」


「――とでもいうと思ったか!? おいサーシャ、これは一体どういうことだよ!?」


「どう、と申しますと?」

 サーシャは「よくわからないですの」って顔をするんだけれど。


 ハヅキが描いた絵ってのはつまり――、


「どこの世界に! 入ってすぐの大広間に! 自分の全裸肖像画をこれ見よがしに飾るやつがいるんだよ!!??」


 ――俺の【完全裸(かんぜんら)】だったのだ!!!!


「ふふっ、セーヤ様が喜ぶかと思いまして」


「ねぇ、サーシャの中の俺はいったいどんな人間なの!? 下半身丸出しでお客様をお出迎えとか、もはやナルシストとか自意識過剰を通り越して露出狂の疑いがあるよ!?」


「ありのーままのー」

「ハヅキ、そのお歌は超ヤバイからやめようね!? ジャ〇ラックされちゃうからね!?」

「うにゅ……」


「セーヤ様、広間の肖像画というのは、ここを訪れる方への配慮でもありますわ」

「……配慮?」


「セーヤ様は今や帝都にもその名を轟かせる有名人ではありますが、そのお顔はほとんど知られておりませんの」


「それはまぁ、そうだな」

 この世界にはインターネットがないわけで。


 地球の裏側の情報がほぼリアルタイムで映像として見られることがどれだけ凄いことだったのか。

 異世界転生してからこっち身分証明するのにも苦労している俺としては、身に染みて実感する今日この頃です。


「これからここを訪れるであろう客人も、セーヤ様を初めて見る人は少なくないですわ。その方たちに《神滅覇王(しんめつはおう)》マナシロ・セーヤが誰なのかが分かるようにする、肖像画にはそう意味もありますの」


「あ、広間の肖像画ってそういう役割があったんだな……」

 中世の様式美、みたいにそんなものかと思っていたんだけれど、うん、異世界に来てまた一つ賢くなれました!

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