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第298話 ……なーんてね!  なーんてね!!  ざんねん! そんなのとっくに知ってたもんねー!(笑)

 くっくっく……!

 くーっくっくっく……!


 いやー、わたしは思わず出てしまいそうになる笑みを堪えるのに必死だったよ。

 というのも定期考査で、なんと全教科満点のグランドスラムでぶっちぎってやったからだ……!


「信じられません! すごいです!」

「さすがマリア様ですわ!」


 わたしを中心に、親友のミナトたち取り巻きがわー!っと輪になって盛り上がる。


 ふっ、当然よ。

 なんせこの日のために、死ぬ気でテスト勉強したんだから……!


 それもこれも――、


「でも、それではアーニャさんの留学は……デザイナーになりたいって……」

「留学は全教科総合5位以内、加えてどれかひとつの科目で1位をとることですわ……でもマリア様が全教科1位ですから必然的に……」

「なんでもアーニャさんは、留学できなければ学校をやめて実家の靴屋を継ぐと……」


「え! そうだったんですか!? アーニャ、ごめんなさい。わたし何も知らずに――」


「いいえ! マリア様は悪くありません! 私、このことはほとんど誰にも言っていませんでしたから、知らなくて当然ですから……」


 夢が破れながら、それでも気丈に振る舞うアーニャに、


「アーニャ……」


 わたしはかける言葉が見つからなかった……。

 人生とは、かくも儚いものなのか……。


 なーんてね!

 なーんてね!!


 ざんねん!

 そんなのとっくに知ってたもんねー!(笑)


 ミーシャの時は大ポカしちゃったけど今回は、絶対ミスなくすマンで完璧にやり遂げたもんねー!


 そもそも!

 しがない街の靴屋の娘の分際で、何が学園一の美少女よ!

 何が夢は大陸一のデザイナーになることよ!


 パーリーではこれっでもかってくらいに男を従えていい気になって……!

 しかもかわいこぶりっこして、ただの貧乏のくせに質素ではかなげなヒロインを演出して!


 わたしにはぜんぶわかってんのよ!

 あんたが狙ってそういう態度をとってるってことがね。


 え?

 なんでそんなこと分かるかって?

 

 だってもしわたしが同じ立場だったら、絶対に同じようにかわいそうなヒロインをアピールするもん。


 でもま、そんなあんたにはきらびやかな上流階級よりも、分相応の小汚い街の靴屋で平凡な一生を終えるのがお似合いなのよ!


 あはは!

 貧乏庶民のくせに調子にのった罰よ、ざまーみろ!(笑)


「アーニャ、手先の器用なあなたならきっと素晴らしい靴職人になるわ。その時にはぜひ、わたしの靴を作ってね?」


 ……だめ、だめよマリア。

 まだ笑っちゃいけないわ。

 堪えるのよマリア……!



 ~~後日。



「マリア、最近よくそのブーツを履いているね」

「これはお友達が作ったんです。仕立ても良くてすごく気に入ってるんですよ」


 うん、とっても気に入ってるの。

 だってわたしが踏みつぶしてあげた庶民が作ったものを、こうやってまた足蹴にするってシチュエーションが、ちょお気持ちいいんだもん(笑)


 ま、実際できは悪くないんだけどね。

 これなら帝都に留学できれば、いいデザイナーになれたかもね。


 留学できたらね?

 くふふっ。


「そうか、ふむ……」

「お父さま?」


「いや、センスが良くて光るものがあると思ってな。何よりマリアにとてもよく似合っている。技術だけでなく履く者のことを第一に考えていることが、これでもかと伝わってくる実によい仕立てだ――」


「え、あ、はい……そうですね?」



 ~~後日。



「アーニャさんの新作、特別に用立ててもらいましたの!」

「あ、ずるーい! わたしなんて並んでも買えなかったのに!」

「わたしもわたしも!」


「いまやアーニャさんは王国では知らない人がいない、天才デザイナーですものね!」

「それもこれも、マリア様のセレシア家がスポンサーになってアーニャさんのブランドを売り出したおかげですわ」


「アーニャさんからは、マリア様がお父さまに口添えしてくれたと伺いましたわ」

「ああ、本当にマリア様は素敵なお方です! 現代の聖女さまですわ!」


「あ、うん、そうね……ありがとう……」


 セレシア家がスポンサーとなって立ち上げたアーニャのブランドは、王国中で爆発的に大ヒットしていた。

 さらには覇権国家シュヴァインシュタイガー帝国の帝都に本店を構える超有名ブランドからも、ブランド提携の話が来ているとかなんとか。


「……どうしてこうなった?」


 ねぇねぇそこのあなた。

 ちょうどいいわ。


 参考程度にちょっとあなたの意見を聞かせてくれないかしら?

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