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第297話 新作ドレス

「ねぇアイリーン。明日のパーリーに来ていく新作ドレスはもう届いたかしら?」

 この前の盆栽のアレで増額してもらったお小遣い。


 わたしはそれでさっそく新作ドレスをオーダーメイドしたのだ。

 それがそろそろ届いているはずなんだよね!


 わたしはウッキウキで専属メイドのアイリーンに尋ねたんだけど、


「お嬢さま、あの、そのことなのですが、実は……」

 なぜか歯切れの悪い答えをよこすアイリーン。


 すぐにふんじばって問いただすと――、


「はぁっ!? サイズがあわない? 寝言言ってんじゃないわよ。どこにあるの、見せなさい!」


 わたしは信じられない気持ちで、アイリーンが持ってきたドレスを確認すると――、


「ちょ、冗談でしょ!? こんなきっつきつじゃ着ていけないじゃない!」

 特注したはずのドレスが、ハーフサイズほど小さかったのだ……!


「前に買われた青いドレスでいかれてはどうでしょう? 大変お綺麗でしたよ」


「そんなのだめよ! だって今回は新作の特注ドレスで行くってみんなに自慢しちゃったんだもん!」


「ですが今から仕立て直していては間に合いませんよ」

「だってそんな、これだけ言いふらしておいて、なのに前の着ていったらわたし完全に笑いものじゃん!? なにそれありえないんだけど!?」


 …………

 ……


 パーリーは最っ低だった。

 わたしの言葉に合わせるようにして、みんな奮発して新しいドレスを用意していたその中で、当のわたしだけが古いドレスを着ていたからだ……!!!!


 最悪だったパーリーの帰り。

 わたしはサイズをミスりやがったグズのいる店へと怒鳴り込んだ。


「あんたね! 昔は有名なマエストロだったかなんかしらないけど、いい加減作風は古いし、こんなありえないミスはするし、腕が落ちたんなら引退すんのが当たり前でしょ! セレシア家は名門なのよ! 服を作るしか能がないくせに、その服すら満足させるものが作れないとか、あんた生きてる価値あるの!? いっぺん死ぬか、それとももう一度――いいえもう一万回、名門お抱えの意味をそのグズな脳みそで考えてみることね!」


 はぁはぁはぁ……。


 わたしは大事なパーリーに新作ドレスを着ていけなかった怒りを、老マエストロにそれはもう激しく、ぶつけにぶつけた。


 相手が老人だから少しは優しくしろ?

 はぁ!?


 だってみんなもわかってくれるでしょこの気持ち。


 みんなに新作ドレスを散々自慢してたのに、古いドレスでパーリーに参加しないといけなかったわたしの惨めさときたら……!


 ムカつくライバルたちが「さも気を使ってますよ~」って顔してわたしを心配しにきやがるんだもん!


 この屈辱ときたら、

「こいつを百万回、社会的に抹殺しても足りないくらいだわ……!」


 絶対に許さない、絶対にだ!!


 その後。

 わたしは2時間にわたって老マエストロをえんえん怒鳴り倒したのだった。


 ついでにこれ幸いと日頃のうっぷんもまとめてぶちまけてやった。

 だって悪いのはこいつなんだし、それくらい当然の権利だよね(笑)


 ま、おかげでちょっとはすっきりしたわ。



 ~~後日。



「これはまた素敵なドレスね! センスも今風、ううんすっごく先をいってる感じ! うん、わたしこれとっても好きだわ! なによ、あのグズなマエストロもやればできるんじゃん」


 新しく届いたドレスを眺めながら、わたしはとてもとてもいい気分だった。


「――それが、老マエストロは引退したそうですよ。これは後を継いだ息子が作ったそうです」

「あらそうなの?」


 ま、無能が去るのはいいことね。

 別に誰が作ろうと興味ないし。


言伝(ことづて)も承っております」

「ふーん、あ、そう」


 でもほんとこれはいいドレスね!

 これならどこのだれにだって負けないわ!


「過去の名声もあってか、既に才能が枯れ果てていた自分に誰も意見できず裸の王様となっていたところ、マリア様のおかげでやっと肩の荷が下ろせました。感謝してもしきれません、とのことです」


「ああそうはいはいよかったわね」

 もちろんわたしはまったく聞いちゃいなかった。


 だってもう意識全部がただただ、この魅力的すぎるドレスに釘づけだったんだもん!


「そんなのどうでもいいから、すぐにこのドレスを試着しましょう! わたし待ちきれないわ!」


 ああ!

 次のパーリーが楽しみ!


 みんなにこれでもかってみせびらかしてやるんだから!

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