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第292話 でもわたしはわかってる。 この女が内心でわたしを見下しているってことを。

「コーデリアとのことで相談に乗ってほしいんだけれど……」

 とあるパーリーの日、わたしはそう声を掛けられた。


「マリアさんはコーデリアの一番の親友だって聞いたからさ……」

 相手は……えーと、どこの誰だっけ?


 なんかその辺に掃いて捨てるほどいる貧乏貴族の息子……だったかな?

 だっとと思う?


 うーん、まったくキョーミないから覚えてないや。


 だってさ?


 なんか冴えない顏だし。

 ひょろモヤシだし。

 性格は男らしさのかけらもないし。

 極めつけに、うだつの上がらない貧乏貴族ときたもんだ。


 なんていうの、男としての魅力ゼロ的な?


 まぁそんなどーてもいいヤツの話を、このわたしがわざわざ聞いてあげたのにはわけがあるのだよ。


「ええ、コーデリアさんはとてもよいお友達ですよ。彼女は勉強もできて、運動もできて、家柄も良くて。ほんと素敵なんです」


 素敵すぎて素敵すぎてほんとムカつく女、それがコーデリアだった。


 テストの点はわたしよりちょい下なのに、課外活動とか言って放課後の奉仕活動で教師におべっかつかってポイントを稼ぐ、それはもうクソみたいな性格をした女なのだ。


 運動はなにをやらせても天才的。

 わたしだってそれなり以上にできるのに、この女がいるせいでいつも影が薄いんだよね。


 何よりムカつくのがその家柄の良さだ。


 コーデリアのクラウス家は、うちのセレシア家よりちょっとだけ格が上なのだ。

 ちょっとだけだよ?


 ほんとちょっとだけ。


 そのへん飛んでる蚊みたいな差しかないんだけど、向こうが格上なのは事実は事実なのだった。


 ま、お金持ちって面では、うちの方が圧倒的なんだけどね(笑)


 でもお金よりもとかく家柄や格式が物をいう貴族社会において、蚊ほどの差であってもコーデリアはわたしより上なのだった。


 しかもだよ?


 コーデリアときたら、まるでそんなもの気にしてませんよーってな顔して「私たち親友ですわね♪」なんて言ってわたしに接してくるのだ。


 でもわたしはわかってる。

 この女が内心でわたしを見下しているってことを。


 え?

 なんでそんなこと断言できるのかって?

 そんなのわたしが逆の立場なら絶対に見下すからに決まってんじゃん!


 ま、そういうわけでさ?

 ちょっとばかし話を聞いてあげたんだけど――、


「僕とコーデリアは幼なじみなんだ。それでその、僕は昔から彼女に好意を持っていて……だからコーデリアの気持ちを、マリアさんからそれとなく聞いてはもらえないだろうか?」


 ――ってな感じの内容だったわけ。


 もちろんわたしの答えはきまっていた。


「とっても素敵ですね! その恋、ぜひとも応援させてもらいますわ!」


 ……ん?

 なんでそんな不思議そうな顔するの?

 わたしが協力するのがそんなに不思議?


 あはははは。

 だってさ。


「カレシは女のステータスだからね。格上のコーデリアが冴えない貧乏貴族と結婚したら、最高に気持ちいいじゃん?(笑)」


 というわけで。

 わたしは全力で二人の仲を取り持ったのだった。


 それもうあらゆる手を尽くして頑張った。

 忙しいお父さまにも折を見てお願いをしたり情報をもらったりした。


「ふぅ、誰かのために頑張るって、なんて気持ちいいことなのかな!」



  ~~後日。

 


 コーデリアの結婚が決まった。

 相手は大陸最大の覇権国家シュヴァインシュタイガー帝国の皇太子だった。


 そして。

 その皇太子というのが、あの冴えない貧乏貴族の息子だったのだ!


「はぁっ!? あの貧乏貴族の息子が実は皇帝の隠し子!? 意味わかんないんですけどっ!?」


「皇帝は男系直系が習わしながら、今の皇帝には娘しかおりませんでした。そんな皇帝がその昔、駆け落ちした時にもうけた子供が彼だったようですな」


 セバスも今回いろいろと陰に日向に働いてくれただけに、まさかの展開に感慨もひとしおって顔をしているんだけど、


「なにそれ!? マジ意味わかんないんだけど!?」


 だって帝国の皇太子ってことは、次の皇帝だよ!?

 お金と権力は問答無用で世界最強なんだよ!?


 冴えない顔面偏差値は、よく見たら割と整った顔立ちだし?

 ひょろモヤシと思ったら、意外と細マッチョだし?


 男らしくないように見えた性格も、裏を返せば穏やかで誠実な性格ってことだし?

 なにより極めつけが、次の皇帝って身分だよ!?


 なんなのこれ!?

 ちょお×100億倍の優良物件じゃん!?


「くっそー! このこと知ってたら相談に乗るふりして誘惑して寝取って、わたしが結婚したのに!」


 よりにもよって、いつも友達ヅラして見下してくるあの女がそこにおさまるとか……!


 あーもうさいあくさいあくさいあく!!


 ゆるせん、寝る!!!!!!!!!

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