第281話 巨大戦力
「いやー、それにしてもここにいるみんなは俺に優しいからいいよな」
ウヅキ、ハヅキ、《神焉竜》、トワ、巫女エルフちゃん、精霊さん。
精霊さんを攻略して仲良くなった今。
ここにいるのはみんながみんな、俺に好意的な女の子ばかりなのである!
もしここに、俺に懐疑的でやたらと勘の鋭い《シュプリームウルフ》シロガネなんかがいたら、間違いなく、
「絶対に嘘なのだ! こいつ、自分が薄着のおっぱいエルフ村で楽しく遊びたいがためだけに言ってるのだ! 騙されちゃいけないのだ! がう!」
――そうそう、そんな感じでズケズケと俺の本心を見抜いて言ってくるからな。
……にしても誰だ?
今のはえらく上手な物まねじゃないか?
まるで本物そっくりで、俺ちょっとびっくりした――って、
「ん……? あれ……? シロガネ……?」
そのしゃべり方。
俺をイマイチ信じようとしない態度(助けてあげたのに!)。
なにより見目麗しい白銀のモフい毛並み――。
そこにいたのは、見間違えるはずもない。
「数日ぶりなのだ! みんな、元気してたみたいで何よりなのだ!」
そう。
元気にあいさつをしてきたのは、帝都で別れたはずの《シュプリームウルフ》シロガネだったのだ――。
「……いや、なんでお前がここにいるんだよ?」
思わず素で聞いちゃったよ。
「何を言っているのだ? 《神滅覇王》がまた顕現したから、もしやと思ってわざわざ助けにきてやったのだ! ここ南方大森林は《シュプリームウルフ》の住処だからな! 助けにいくのは当然なのだ! がう!」
「ああそういやそうだったっけか……すっかり忘れてた」
なんていうか、異世界転生してからこっち、毎日の密度が濃すぎて濃すぎてさ。
結果、さして重要じゃない情報はころっと忘れちゃうんだよな……。
だって俺、まだ異世界転生してから2週間も経ってないんだぜ?
信じられる?
「それと、一つお前に伝えることもあったのだ!」
「……なんだよ? あ、《神焉竜》が南方大森林でいろいろ恐喝紛いなことをやったみたいだけど、苦情は受け付けないからな? 言っておくが俺は完全に無関係だ」
むしろ勝手に名前を使われた俺は、被害者ではないだろうか?
「それなのだ! 《エルフ》は《神滅覇王》に従ったと聞いたのだ! それと同じで、《シュプリーム》も《神滅覇王》に味方することにしたのだ!」
「……はい?」
「ふん、我は嫌だったのだが、族長である父上が決めたことだからな! 誇り高き《シュプリームウルフ》としては、従わざるを得ないのだ! 掟なのだ!」
「いや急にそんなこと言われても……」
「その証としてこうやって我が来たのだ! これからはお前をサポートしてやるから、大船に乗ったつもりでいるのだ!」
「ではクレアと同じですねー、よろしくですー」
巫女エルフちゃんがぺこりと挨拶をした。
薄着のおっぱいが揺れていた。
実に眼福だった。
俺は、俺はこの日常を守ったんだな……!
「おまえは……エルフ?」
「はいー、はおー様にご奉仕する巫女エルフですー」
「ご奉仕巫女エルフなのか……わかったのだ、よろしくなのだ!」
「あ、アタシは精霊なんだ!」
「も、ものすごい上位精霊なのだ……!? ま、まさかSS級の《精霊王》なのだ!?」
「あ、わかっちゃう~~? でへでへ~~。あ、ちなみに今は《精霊神竜》だから」
「まさか《精霊王》――《精霊神竜》までつき従っているとは想定外だったのだ! しかも幼女も2人に増えてるのだ!」
「トワと申します。初めまして狼さん。今後ともよろしくです」
「すごく礼儀正しい幼女なのだ!?」
「いや実はかくかくしかじかでね――」
シロガネと別れてからのあれこれを俺が説明すると、
「なんでたった数日でそんなことになっているのだ」
「それは俺が聞きたいよ……」
「歩くSS級ホイホイなのだ……!」
シロガネは素直に驚いていた。
「いやはや。エルフに続いて《シュプリームウルフ》も主様への恭順を選んだということじゃの。ドラゴンは王竜たる妾が一声かければ一発じゃし……うむうむ、勢力拡大は着々と進んでおるのじゃ。まっこと良きかな良きかな」
なんか、しめしめって顔で頷いちゃってる《神焉竜》。
「ちょっと思ったんだけどさ? 《シュプリームウルフ》もドラゴンもS級とかSS級だよな? こんなに巨大戦力を集めて大丈夫なのかな? パワーバランスとか地政学的なアレコレとか大丈夫……??」
《神焉竜》とは真逆で、正直不安しか感じない俺だった。
「俺の異世界転生に、国盗り物語の要素はいらないんだけど……」