第257話 はおー! はおー! はおー! はおー!
《神滅覇王》の顕現と時を同じくして。
精霊さん(《精霊神竜》)から発せられていた虹色の光と衝撃波が収まってゆく。
精霊さん(《精霊神竜》)――いや事ここに至っては「カッコ付け」じゃなく《精霊神竜》と呼ぶべきだろう――その《精霊神竜》顕現によって引き起こされた世界の揺らぎが、一段落したのだ。
「……やっと収まったのじゃ。そして主様、ようやっと本領発揮というところじゃの」
防御態勢を解いた《神焉竜》は、黄金の粒子をまとい《神滅覇王》を顕現させた俺を確認すると、嬉しそうに目を細めた。
「おうよ、待たせたな! で、これって――」
「うむ。どうやらあの小精霊が《精霊神竜》――『神なる竜』と名乗っていたのも、あながち誇張というわけではなかったようじゃの」
「――ってことだよな」
俺たちの眼前――光と衝撃波が収まったその爆心地――にいたのは、虹色の光をまとった一体の美しいドラゴンだった。
それは《神焉竜》と同じく圧倒的にすぎる巨体。
しかし同じドラゴンでもずんぐりむっくりした西洋風『ドラゴン』な《神焉竜》に対して、細長い胴体の《精霊神竜》は東洋風の『龍』と呼ぶほうがしっくりきそうだ。
「存在の密度が異様に濃いのじゃ。アストラル界は精霊の力を強化するとはいえ、いったいどれほどの力を秘めているのやらのぅ」
「さっきまでは、どっちかって言うと微笑ましい『煽り人』だった精霊さんなのに、なんかもうこれはガチを通り越してヤバい感じだな――」
破壊衝動をそのまま剥きだしにしたような暴力的なオーラを放つ《精霊神竜》は、ただ向かい合っているだけで息苦しいほどだった。
そこにはもう、どこか憎めない精霊さんの面影は、かけらも残ってはいない――、
「ごめんね……アタシの中の眠れる《精霊神竜》が出てきちゃってごめんね……ゴッド・ドラゴンが強すぎてごめんね、最強すぎてごめんね……つらいわー、強すぎてマジ辛いわー」
「……うん、やっぱ精霊さんは精霊さんだったわ」
ちょっと安心した俺だった。
「そう、アタシは《精霊神竜》、神なる竜の精霊王……アストラル界を統べる絶対存在……さぁせいぜい抗ってみるがいいわ――!」
言ってることはさっきまでと特に変わっていない精霊さん。
だけど、ただの「中二病」で「煽ラー」だったさっきまでと打って変わって。
その言葉は段違いに重みを増している――!
――と、
「はおー様のほんき、はじめて見ましたー!」
巫女エルフちゃんが背後からのほほーんと感嘆の声を上げた。
さらに、
「はおー! はおー! はおー! はおー!」
振り返るってみると、なんか右腕をぐっと高く突き上げながら前後にぶんぶん振って応援してくれている。
そして銀河級の巫女エルフちゃんっぱいもぶんぶん揺れていた……ご、ごくり。
「ありがとう。なんだかすごくパワーがみなぎってきた気がする(主に性的な意味で)」
「はおー流の応援ですからー」
「さすが覇王流だな……どんな時も全くブレることがない……!」
そんな巫女エルフちゃんに、ハヅキとトワのダブル幼女がすぐ同調し、空気を読んだウヅキも右に倣えで大きく手を突き上げて――、
「「「「はおー! はおー! はおー! はおー!」」」」
最終的に4人の女の子たちによる大合唱となっていた。
ちょっと照れくさいというか、どこぞの新興宗教の教祖様っぽい気がしなくもない。
まぁなんだ。
そんな応援してくれる女の子たちの想いを受けて、
「よーし、全部俺に任せとけ――!」
俺のテンションは限界突破の最長不倒。
俺の気合に応えるように黄金の粒子が一際大きく吹き上がった。
女の子たちの応援に発奮したのか、《天照》もいつにもまして絶好調である。
手元には燃え盛る黄金の粒子をこれでもかと吸収し、その姿を光り輝く黄金神剣へと変えた《草薙の剣》がある。
「行くぜ《精霊神竜》――!」
さて。
準備は整った。
「たとえこのアストラル界が、精霊にとって極めて有利なフィールドであったとしても――! それでも俺が、《神滅覇王》こそが! 唯一無二の最強であることを! 不敗神話の絶対王者だということを! 今からガッツリ教え込んでやるぜ――!」
こうして。
《神滅覇王》&《神焉竜》
vs
《精霊神竜》
三大SS級大決戦が幕を上げた――!