第246話 迷いの森、攻略!
「考え? うん、とりあえず聞こうか」
これだけの巨大な迷路に挑もうってんだ。
まずはいろんな意見を聞いてみて、最良の戦略を立てなければならない。
「なに、考えと言っても大したことではないのじゃ」
言うと、《神焉竜》は本来の姿、一軒家程もある巨大な黒竜へと姿を変えた。
そして、
「皆、乗るのじゃ」
「え? おう」
言われるがままに、俺たちは《神焉竜》の背中に乗りこんでゆく。
高いところに登ったり下りたりするのが得意でないウヅキを手助けするため、俺はウヅキのお尻を下から押し上げてあげた。
俺の両の手のひらが、「桃の女王」こと清水白桃のごとく柔らかいお尻に「ぐむにゅっ!」と沈み込む。
うむ、実に素晴らしい手触りだね!
「いつもすみません、セーヤさん」
「なーに、いいってことよ。こう見えて俺って紳士だから」
「あ、はおー流ぱわー回復プログラムの1つ『昇降運動のおてつだい』ですー」
「昔の《神滅覇王》はさすがだな!」
もはや完全に恥も外聞もなく好き放題やってるところ、振り切っててすごいと思います!
とまぁそんな感じで全員が乗り込んだところで、
「では行くのじゃ――!」
《神焉竜》が大きく翼を広げて飛び立った――!
そして俺たちは――、
「……いいのかな、これ?」
「ど、どうなんでしょう……?」
『迷いの森』の上空を飛んで、ゴールである塔までの最短距離を一直線に「攻略」し始めた――のだった。
「たかが数キロの距離なんぞ、天空の覇者たる妾にとっては散歩にもならん距離なのじゃ。極めてイージーなのじゃ」
「まぁそうだね……うん、そうなんだけどね? 問題はそこではまったくないというか……」
「なーに、空を飛ぶなとは言われてはおらぬのじゃ」
「まぁ普通は言わないだろうな……」
「つまり何の問題もないということなのじゃ――むしろルールの穴を見つけたという点を鑑みれば、空を飛んだことこそが『知恵比べ』に相応しいまであるのじゃ」
「いわゆる『とんち』ですね。とても勉強になります」
トワがふんふんと感心し、
「うにゅ、いっぽん、とられた」
ハヅキ画伯も納得のご様子。
「わぁ! すごいですー」
巫女エルフちゃんはその辺はどうでもいいのか、身を乗り出して眼下の眺望を楽しんでいた。
なるべく下を見ないようにと、《神焉竜》の背中の一番真ん中に座って、
「落ちません、落ちませんよ……!」
ぎゅっと俺の腕を胸に抱きしめて、はぅー!って顔して前だけを見ているウヅキとは正反対だった。
どっちも可愛いけどね!
――などと。
みんなでわいわい盛り上がっている間に、ゴールである塔がぐんぐんと近づいてくる。
「あ、精霊さんがいた……なにか叫んでるぞ……」
「きっと妾の機転に賞賛を送っているのじゃろうて」
「とてもそうは見えないけどな……」
だって精霊さんってば、顔を真っ赤にしてプリプリ怒りながら、こっちを何度も指差してぎゃーぎゃー言ってるんだもん……。