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第242話 歴史資料集

「話はついたようね。じゃあ勝負よ! ウフフフフ……!」

 またもやニヤァ……って感じの気持ち悪い笑いをした精霊さんは、


「とりま、これは置いといて――」

 なぜか教科書を脇に置くと、それとは別の、教科書より少し大きめの本をとり出した。


「あ、それって副教材の歴史資料集――」

「副教材の資料集……久々に聞いたなその単語」

 学生時代を思い出してなんだかちょっと懐かしいよ。


 そしてどうやらつまりこれは――、


「あら、誰も教科書から出す、なんて一言も言ってないわよ?」

 ってことなわけだ――!


「いやお前さっきこれ見よがしに教科書を出してたよな?」

「あれはただのイメージ映像ですー、実際とは異なりますー」


「教科書からって言って――」

「ちゃんと教科書『とか』って言いましたー」


 こいつ――!

「さては最初から()める気だったな!」


「なんのことか分っかりませーん!」

「くっ、なんて卑怯なやつなんだ……!」


 俺がこうまで憤慨するのは無理もないことだった。

 だって歴史資料集だぞ?


 受験や定期テストにはほとんど関係ないせいで、その存在価値ときたらもはや「持ち運ぶことで体を鍛えるためのウェイト」でしかない、あの歴史資料集だぞ?


 たまにぺらぺらっと眺めるだけで基本、新品同様の綺麗な姿で卒業式を迎えるあの歴史資料集だぞ?


 卒業間際に、

「きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。卒業なんだぜ?」

「私をほにゃらら大学(志望大学)に連れてって」

 とかやって遊ぶあの歴史資料集だぞ?


 果たして歴史資料集の中身をちゃんと見たことのある学生が、世界に存在するのだろうか!?

 少なくとも俺は「カラーがいっぱいだな」くらいの認識しかなかったぞ!?


「くっ、なんて卑劣な……!」

 歴史資料集から問題を出すなどという、悪魔のような姦計を巡らせた精霊さんを、


「精霊さん、俺は、俺は君を見損なったぞ!」

 俺は激しく弾劾(だんがい)した。


 しかしそんな俺を、

「ふふん、負け犬の遠吠えは実に気持ちいいわね! でも勝負はもう成立しちゃってるもんねーだ! ばーかばーか! あははははは!」


 精霊さんは一笑に付して切って捨てた。


「くぅ……!」

 そんな、ギリギリと歯ぎしりをして悔しがる俺をなだめたのは、


「セーヤさん、わたしなら大丈夫ですから」

「……ウヅキ?」

 だった。


「歴史資料集なら一度、目を通したことがありますので」


「いやでも、あれって膨大な資料をひたすら網羅的に載せてるだけで、さすがのウヅキだってあれを全部覚えてるなんてことは――」


「大丈夫です。こう見えてわたし、記憶力だけは自信がありますから」


「ウヅキの記憶力が超一級品なのは認めるけど、それでも一度見ただけの歴史資料集を全部覚えてるってのは――」


 俺とウヅキのやり取りに、


「ほらほら、その子もそう言ってるじゃないの! 《神滅覇王(しんめつはおう)》はその子のことを信じてないわけ? あーあ、かっわいそー(笑)」


 精霊さんが茶化すように割って入った。


「くっ……この……言わせておけば……! ウヅキのことを誰よりも信じているに決まってるだろ!」


「信じているなら、なんの問題ないわよね? ってなわけで、次は歴史問題の勝負よ!」

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