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第237話 べんとらー、べんとらー

「で、《精霊神竜》は俺と――《神滅覇王(しんめつはおう)》とやりあいたいんだろ? 精霊殿ってとこにいるんだよな?」


「そうだよ? でもアンタたちに行けるかなぁ? 精霊はアストラル界にいるからね、まずはアストラル界に入らないと何もできないんだよーっだ! ってイタタタタ! やめて、腕がもげちゃう! もげちゃうから!?」


 小生意気な精霊さんを《神焉竜(しんえんりゅう)》が折檻していた。

 すぐにキレて手が出る《神焉竜(しんえんりゅう)》も大概だけど、精霊さんは精霊さんで囚われの身なのに、すぐ調子にのりすぎだぞ……。


 でもどうする?

 アストラル界ってとこに行かないとなにも始まらないわけだけど、


「どうやって行くんだ? そもそもどこにあるんだ?」

 精霊さんからその辺もろもろを聞きだそうとした時――、


「じゃあクレアが案内しますー」

 のほほんとした声があがった。

 もちろん巫女エルフちゃんだ。


「えっと、案内って……?」

「案内は案内ですよー、じゃ、みなさん、クレアについてきてくださいねー」


「え? ええぇぇ……っ!?」

 そんな軽いノリで行けちゃうの……?


 …………

 ……


 移動すること数分。

 良く分からないままに巫女エルフちゃんに連れてこられたのは――、


「……ここって、エルフ村の入り口だよな?」

 ウヅキとのデートで最初に説明されて行ってみたものの、特に何があるわけでもなかった村の入り口だった。


 雪が積もり始めて真っ白なせいでだいぶん印象が違うけど、何もないことは変わりない。


「こんな何もないところで、なにをどうしようってんだ?」

 そんな俺の疑問に、巫女エルフちゃんはスマイルオンリーで応える。


 その笑顔の可愛さときたら「あ、この女の子って俺に気があるな、間違いない」と勘違いすること請け合いの極上のモテかわスマイルだった。


 そしてモテかわ巫女エルフちゃんはというと、


「べんとらー、べんとらー、精霊(せーれー)世界にGo(ごー)! べんとらー、べんとらー、精霊(せーれー)世界にGo(ごー)!」

 適当すぎる(ようにしか聞こえない)呪文を唱え始めたのだった。


「べんとらー、べんとらー」


 必死に祈ること数分――、


「なっ!?」


 一瞬、周囲がぶれたかと思うと、いつの間にか目の前には壮大な神殿がそびえ立っていた。

 さっきまで激しく降っていた雪も跡形なく消え去っている。


「は? ええぇっ?」

 正直な感想を言っていい?


「初めて巫女エルフちゃんが巫女っぽいことをした!」

 巫女エルフちゃんは、治療と称してえっちな遊びをするだけの「自称・巫女」じゃなかったんだな!


 しかもよく分からないけど、マジですごいことをやってのけたっぽい!!


「ふむ、世界の二重螺旋……アストラル界と物質世界の捻じれを利用して、周囲の空間ごと位相同調させたのか」

 《神焉竜(しんえんりゅう)》が大変に難しいことを言っていた。


「そんなかんじですー。ちょうど村の入り口が、アストラル界の精霊殿の入り口と同じ概念位相にあるのでー、ここからならいーかんじに繋げられるんですー」


 しかも巫女エルフちゃんはそれにさらっと受け答えしていた。

 すでに俺は理解するのを諦めていて、「つまりワープしたんだろ?」と思うことにしていた。


「しかしさすがの(わらわ)もこれには驚かされたのじゃ。(わらわ)ですら見ることがやっとのアストラル界に、空間ごと転移させるとはの。これはもはやSS級の転移術……エルフの小娘よ、お主いったい何者じゃ?」


「巫女エルフですからー」

 《神焉竜(しんえんりゅう)》すら驚くようなことをしながら、いつものフレーズで返しちゃう巫女エルフちゃんってばマジ大物!


 っていうかこの人たち、さっきからなにを話してるの?

 俺さっぱりついていけてないんですけど?


「なにがどうなったのかさっぱりだけど、うん! すごい、すごすぎるぞ巫女エルフちゃん!」

「これくらい、ふつーですよー」


 そして何よりも誰よりも一番驚いていたのが、


「はいぃぃぃぃぃぃっっっっっっ!!??」

 目を大きく見開いて呆然としている精霊さんだった。


「とりあえずアストラル界には行けたみたいだけど?」

「ぽっかーーーーん…………はっ!? きょろきょろ……ま、まぁ、その? アンタたちもなかなかやるみたいね? まぁ来ないと始まらないんだし、来れて当然だから?」


「いやお前『アンタたちに行けるかなぁ?』って嫌らしい笑みを浮かべながら言ってただろ……」

「イチイチうっさいわねっ!? アンタ《神滅覇王(しんめつはおう)》のくせに細かいこと気にしてんじゃないわよ!」


「なんで俺が怒られにゃならんのだ……」

「いいから次よ次っ! 勝負はここからが本番なんだから! 覚悟してなさいよ!」

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