第235話 ぐええぇぇぇぇ……!? ごふぅ……
「で? なんで《精霊神竜》は急に常夏エルフ村に雪を降らせたんだ?」
俺はみんなを代表して、捕虜にした精霊を尋問していた。
「知らないもーん」
「目的はなんだ? どうすれば、また元の常夏エルフ村に戻してくれるんだ?」
「分からないもーん」
イラッ……!
「こいつ……下手に出ていりゃ調子にのりやがって……!」
優しくしてやってるってのにこの態度……!
「おいおい、分かってるのか? お前の立場は『捕虜になったスパイ』なんだぜ?」
虜囚の身の分際であまり調子にのってると、俺も禁断の拷問系S級チート『秘密収容所』を使っちゃうよ?
悲鳴を上げる気力すらなくなるというアメリカ中央情報局式の拷問術で、全部するっとまるっと吐かせちゃうよ……?
ダークサイドに染まった禁忌の力に手を出しかけた俺を止めたのは――、
「やれやれ、主様にはこういう手合いの相手は向いておらぬのじゃ。ここは妾に任せるのじゃ」
意外も意外、《神焉竜》だった。
「えっと? なんていうか、お前がこういうのに興味を持つなんて珍しいな?」
ダルいからしない、そもそも興味ない、ってのがデフォなのに。
「さっきたっぷりとなでなでしてもらったからの、特別サービスなのじゃ。気にするでないのじゃ」
「まぁそういうことなら、頼もうかな? このままじゃ埒が明かないし」
拷問系チートだってできれば使わないに越したことはない。
「あ、でも、お手柔らかに頼むぞ? 対話で解決できるなら、それに越したことはないんだしさ」
俺はちゃんと釘を刺しておくことも忘れなかった。
ふふん、優秀な部下を使いこなしてこその王(《神滅覇王》なので)というものよ。
「分かっておるのじゃ……主様はほんに心配性じゃの」
「そりゃお前の性格考えたら、心配性にもなるわ……」
でもま、こうやってちゃんと言い聞かせておいたんだし大丈夫だろ。
――そう思ってた時期が俺にもありました。
尋問官をすることになった《神焉竜》は、さっそく掴んでいる精霊を顔の前まで持ってくると、
「では木っ端精霊よ、端的に問うのじゃ。なにが起こったか分からぬうちに今この瞬間に消し炭になるのと、知っていることを洗いざらいしゃべってから心置きなく消し炭になるのと。どちらが良いか、好きな方を選ぶがよいのじゃ」
そう言って掴んでいた精霊さんの首を、ギリギリと容赦なく絞めはじめた《神焉竜》。
「ぐええぇぇぇぇ……!? ごふぅ……」
精霊さんが声にならない声を上げながら必死にタップして助けを求めているけど、《神焉竜》はというと特に気にする様子もない。
ぐいぐいとその手に容赦なく力を込めていく。
「ねぇあの、ちょっと!? お手柔らかにって言ったよね!? ついさっき直前に言ったよね!?」
なのに、なんでいきなり拷問はじめちゃってんの!?
「主様、そんなに慌ててどうしたのじゃ? 言われた通り優しくしておるじゃろう? このような小生意気な下っ端、本来なら腕の1本や2本、もいでから締め上げるところなのじゃ」
「…………」
さすが伝説の暴竜、『優しく』の概念が違いすぎるわ!
改めて、改めて《神焉竜》だけは怒らせないようにしようと、固く心に誓った俺だった。