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第231話 雪降る常夏エルフ村

 ちら、ほら――ちら、ほら――と、


「え――?」


 次から次へと舞い降りはじめた、その白くてさらさらとした冷たく小さな結晶は――、


「雪――?」 


 ――だった。


 冷静にな(らざるをえなか)った俺は、えっちな知恵の輪ホールドを若干しょんぼりと解除すると、すぐに状況の確認に入った。


「はわわ!? これ、雪……ですよね!?」


 手のひらに触れた途端に水となって溶け消えた雪を見て、ウヅキも「あいや、これはビックリ!」ってな声をあげる。


「うん、雪だ、間違いない。間違いないけど――」


 エルフ村は常夏、つまり文字通り常に夏のはずだ。

 そして当たり前だけど、夏に雪は降りはしない。


「なのに、雪が降ってる……? 一体なにがどうなってるんだ……?」


 何もわからない中で唯一わかるのは、今のこの状況が明らかに異常事態だっていうことだけだった。


 ――と、

「うぅっ、すごく寒いです……」

 ウヅキがぶるぶるっと身体を震わせた。


「うん、俺もすっげー寒い。2人とも半袖だし――」


 常夏エルフ村ではそれでも暑いくらいだったけれど、これは間違っても雪が降るような天気でやっていい格好じゃあない。


「身体がエルフ村の温暖な気候にすっかり順応しちゃってるからな……」


 そこにきて、この突然の雪と寒さだ。

 気温は下り最速。


 温度差が激しすぎて、体感ではもう氷点下ってくらいにめっちゃ寒いぞ……!


「凍死する、とまではいなかくても、こりゃ風邪を引く程度じゃすまないかもしれないな……」


 俺とウヅキはどちらからともなく自然と2人身体を寄せあって、お互いの体温で(だん)をとった。


「セーヤさんの身体、あったかいです……」

 むにゅり、とウヅキのおっぱいが俺の二の腕に押し付けられる。


「おぅ……ウヅキもむにゅっと柔らか――」

「??」


「――あ、いや、あったかいね! 身体の芯まで、どころか心まで温まるよ!」

「えへへ、ありがとうございます」


 あぶないあぶない。

 体温ではなくパイ温に意識がいっていたことを、危うく自白してしまうとこだったぜ……。


 いろいろもろもろ誤魔化そうと見上げた空は――天気の話題は会話展開力に乏しい童貞の必須手段だ!――しかしいつの間にかどんよりとした灰色の冬空へと置き換わっていた。


「雲がすごく厚いです……この感じだとしばらくは降りやまなそうですね……粉雪なので積もるかもしれません……」

 視線を上げた俺に気付いたウヅキも、同じように憂うつを帯びた寒空を見上げる。


「ああ、これってどう見ても一時的な天気の気まぐれじゃないよな。よし、そうと決まれば話は早い。いったん巫女エルフちゃんたちのところに戻ろう」


「わたしもそれがいいと思います」


 このままいつまでも身を寄せ合って、ぶるぶるしてるわけにもいかない。

 雪が強くなって積もったりしたら、移動だって困難になる。


「ウヅキ、危ないから手を繋ごう」

「は、はい。ありがとうございます……えへへ、セーヤさんの手、あったかいです」


 俺は強まる雪でウヅキが滑ってこけたり、はぐれたりしないようにとその手をぎゅっと握ると、可及的速やかに巫女エルフちゃんたちのハウスへと、帰還することにしたのだった。

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