第226話 巫女エルフですからー
「でも二人とも起きたら、ウヅキと《神焉竜》がいるからびっくりするだろうな」
「んー、じゃがさっき妾を見た時の主様ほどは驚かないはずなのじゃ」
「あ、はい、ごめんなさい……」
どうにか許されてホッと気が緩んだのがいけなかったのか、即きっついツッコミを受けた俺だった。
「もうだめですよ! 終わったことはちゃんと水に流さないと。それにあんなに楽しそうなセーヤさんを見るのは初めてでしたし」
「あ、はい、本当にごめんなさい……心配かけたのに楽しく遊んでてごめんなさい」
「あ、あの、そんなつもりで言ったわけでは……」
悪いのは巫女エルフちゃんたちとパイタッチして遊びほうけていた俺なのに、なぜか恐縮するウヅキ。
ううっ、なんて、なんていい子なんだ……!
俺は改めて心の中で、とってもとってもとってもとっても大反省をしたのだった。
「それでじゃ。そこなエルフたちよ」
《神焉竜》が、ガチの殺気を飛ばして部屋の隅っこに追いやっていた巫女エルフちゃんたちに問いかけた。
「は、はい――!」
すでに殺気はなくなっているにもかかわらず、超がつくほどビビりまくってる巫女エルフちゃんたち。
俺も《神焉竜》と戦ったから気持ちは分かるよ。
なにせあの殺気を受けたら、生存本能が逃げることを全力で訴えかけてくるからな。
「つまりお主らはじゃ。主様を助けてくれた恩人というわけなのじゃな?」
「あ、うん、そーなんです……」
「なぜそれを早く言わんのじゃ!」
《神焉竜》はそう言うけどさ?
「えっとその、言えるような雰囲気ではなかったよーな……? むしろ殺されるかもってゆー……」
巫女エルフちゃんのその言葉に、まったくもって完全同意の俺だった。
「あの、巫女エルフさんたち、怖がらせてしまってごめんなさい。それとセーヤさんを助けてくれてありがとうございました! お礼はいつか必ずしますので――」
「いえいえー。はおーさまの正妻さまの言葉だけで充分ですー。クレアたちは巫女エルフですからー」
巫女エルフちゃんは巫女エルフちゃんで、ほんとなんでも「巫女エルフですから」で片付けようとするよね……。
いやほんわか平和でいいんだけど。
「うむうむ、とても良い心がけなのじゃ。エルフの小娘どもよ、これからも主様に尽くすことを許すのじゃ」
「ありがとーございますー!」
そして本人そっちのけでとんとん拍子にまとまっていくお話……とまぁ、そう言うわけで。
俺の巫女エルフちゃんと《神焉竜》が修羅場すぎるお話は、無事かつ完璧に一件落着とあいなったのだった。
そして――、
「うにゅ……おねぇ?」
「おはようございます」
ちょうどいいタイミングでお昼寝から目を覚ました幼女2人。
ハヅキはウヅキを見ると嬉しそうに駆け寄ってくる。
その後ろをとてとてと可愛いらしく歩いてくるトワ。
「トワに対してはお姉さん風を吹かせているハヅキだけど、ウヅキの前では子供だなぁ……ほっこり」
今度こそ、今度こそ俺のもとに平和な日常が訪れた!
訪れたはず!
「幼女たちと行く南方大森林ミステリーツアー!!」――完。
温かい応援ありがとうございました!