第225話 久々のダブルなでなで
「ふむ、トワにそのようなことがの……」
ウヅキのとりなしによって服を着ることを許され、パンツ一丁での正座から解放された俺は。
「幼女たちと行く南方大森林ミステリーツアー!!」から始まって《スサノオ》と戦った冒険譚を、ウヅキ&《神焉竜》に語って聞かせていたのだった。
「それにしてもエルフの大長老たちが献上した宝石――エルフの秘宝が、防御フィールドのヒントとなるとは。いやはやさすが妾、先見の明があるのじゃ」
「それについては本当に感謝してる。お前があれを持ってきてくれてなかったら正直危なかったと思う」
結果論とはいえ、俺は《神焉竜》の行動によって命を救われたわけだ。
「なに、前にも言ったはずじゃよ。妾の手柄はつまり主様の手柄なのじゃ。やはり主様は運をもっておる、最後に勝利を引き寄せる天運というやつじゃ」
「仮にそんなものを持っていたとしても、できればその天運を使わない、明るく楽しいゆるーく平和な生活をしたいんだけどね……」
「それにしても先史文明の遺産なんてスケールが大きなお話ですよね。なんだか歴史の授業みたいです」
珍しくウヅキがちょっとワクワクしてるっぽかった。
自分の好き嫌いや趣味嗜好をあまり自己主張しないウヅキだけど、遠い時代に思いをはせる歴女の素質があるのかもな。
ちなみにハヅキとトワの幼女2人は絶賛お昼寝中だった。
むにゃむにゃにへら~って感じで二人並んで気持ちよさそうにお昼寝してたので、あと30分くらいは寝かせてあげよう。
「そういや《神焉竜》って超長生きなんだよな。昔の《神滅覇王》のこととか先史文明のこととか、そのへん覚えてたりしないのか?」
物は試しって感じで《神焉竜》に聞いてみた――んだけれど、
「うーむ、妾、どうでもいいことは割とさらっと忘れるタイプじゃから、イマイチ覚えておらんのじゃ……」
「うん、まぁそうだよね。どっちかって言うと、興味ないものにはとことん興味ないタイプだよね……」
うん、知ってた。
「じゃがの、《神滅覇王》に凹られたことだけは、今でも鮮明に覚えておるのじゃ。それはもう例えようがないほどにボコボコにされて、途中から生きるサンドバッグ状態でのぅ……」
おい《神滅覇王》……少しは加減ってもんを知れよ……。
「自慢の耐久力が故にエンドレスで凹られ続けた妾は、最後はボロ雑巾のごとく蹂躙されきって、あの忌まわしい錫杖の中に封印されたのじゃ」
「お、おう……お前も大変だったんだな……」
「――というわけでじゃ。その後のことは知る由もないのじゃ。えっへんなのじゃ」
「そんな胸を張ってドヤ顔で言われてもな……胸を張って……ごくり」
胸を張ったことで《神焉竜》のおっぱいと谷間がばいーんしている……っ!
思わず覗きこんでガン見してしまうのは、男としてこれまた仕方のないこと……!
くっ、しかしおっぱいを覗きこむ時、おっぱいもまた俺を覗いているのだ!
だめだ、なにを言っているのか自分でもよく分からない!
「主様に褒められて妾嬉しいのじゃ。主様の熱い視線も感じるのじゃ。そして褒めたからにはなでなでするのじゃ」
「……えっと、今どこかでちらっとでも褒めたかな?」
いやいいんだけど。
「ほらなでなでー」
「ほわーん……うむうむ、主様のなでなでは天下一品なのじゃ……もっと撫でるのじゃ」
俺はおっぱいを見せつける――あ、いや、胸を張ってドヤってる《神焉竜》の頭をいっぱいなでなでしてあげる。
「それでセーヤさん、今のトワちゃんはもう、普通のトワちゃんなんですよね?」
「あ、うん、もう俺を襲うことはないはずだよ」
俺は《神焉竜》をなでなでしながらウヅキの問いに答える。
「難しいことは分かりませんけど、はい、それなら良かったと思います。こうやってみんな無事でしたしね。終わりよければ全てよし、です」
「さすが奥方殿はいいことを言うのじゃ。ほわー……」
なんとなくウヅキもなでなでして欲しそうだったので、俺は久々のダブルなでなでをしてあげる。
「えへへ……」
ウヅキの顔が嬉しそうにほころんだ。
文字通り両手に花となって、俺もにやにやが止まらなかった。
やれやれ、モテるってほんと素晴らしいな!
つらいわー、モテすぎちゃってつらいわー。