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第223話 ウヅキと《神焉竜》……

「……えっと」


 俺は目隠しをとった。

 すると目の前に《神焉竜(しんえんりゅう)》が……いた。


「こ、こんにちは、《神焉竜(しんえんりゅう)》……」


「ふむ、こんにちはなのじゃ? ちなみに奥方殿もおるのじゃ」

「そうですか……」


 《神焉竜(しんえんりゅう)》の視線の先、部屋の入口には言葉通りウヅキが立っていた。


「あの、セーヤさん、ごめんなさい。帰りが遅いので少しだけ心配になってきちゃいました」


「あの、ウヅキ、うん……はい……」


 俺は自然と居住まいを正した。

 つまりは床に正座した。


「俺は今、誠意を、誠意を見せなければならない……っ!!」


 作法系A級チート『不動如山うごかざることやまのごとし』によって、俺は背筋をピンと伸ばしたそれはもう美しい姿勢をとった。


 当然、《神焉竜(しんえんりゅう)》を見上げるような格好になる。


 その表情はまるで能面のようで、感情の色というものが完全に抜け落ちていた。

 つまりとても怖かった……。


「ご、ごめんなさい系S級チート『浮気現場に踏み込まれた夫』……!」

 せっかくパワー回復プログラムで回復しつつあるのに、いきなり無駄遣いとか四の五の言ってはいられない……!


 相手が許してくれる雰囲気になる、というこの奥の手チートに俺は全てをかける!

 ちなみに消費型チートなので1回使用したら2度とは使えない。


 どんな仏心をもった優しい妻であっても、浮気が許されるのは最初の1回だけ、それ以外は絶対に許さない、絶対にだ!

 そんな異世界転生局の強い強い意志を感じるね!


「時に主様(ぬしさま)。いつまでたっても帰って来ない主様(ぬしさま)を心配して(わらわ)と奥方殿が主様(ぬしさま)を探しておった間、主様(ぬしさま)はここで何をしておったのじゃろうかの?」


「えっと、それは……その……何をと言われると困るのですが……」


「なにやら見たところ、ずいぶんと楽しくはっちゃけておったようじゃが?」


「……いやそのですね? これには一言では言い表せない、深い深い事情がありまして……」


「ほぅ、心配する(わらわ)と奥方殿をほっぽりだしてまでの理由となると、なるほど、それはそれは深い理由があることじゃろうの」


「えっと……はい……」


「では参考までにぜひとも聞かせてほしいのじゃ、その理由とやらをの。なに、時間はいくらでもあるからの。薄着のエルフたちとパンツ一丁で目隠し鬼ごっこをする、その深い深い事情とやらを、好きなだけ説明するがよいのじゃ」


「…………」


 ヤバい……《神焉竜(しんえんりゅう)》が怒っている。

 俺が巫女エルフちゃんたちときゃっきゃうふふしてたのを、めっちゃくちゃ怒っている……!


 背中をだらだらと冷や汗が流れ落ちた。

 「滝汗」ってこういうのを言うんだろうな……。


 そして最大の問題は、どこから見られていたか、だ。

 最後の瞬間だけなら、まだ言い訳のしようもある……!


 どうにかしてそこを聞きださなければ……!


「いやなに勘違いしてもらっては困る。女遊びをするなとは言わぬのじゃ。そんなことでは責めはせぬのじゃ」


「あ、ほんと……?」


 あれ?

 なんだよ?

 ちょっと拍子抜けしちゃったよ?


「もちろんじゃ。古来より英雄は色を好むもの。英雄の中の英雄たる主様(ぬしさま)ならば、それこそ10人や20人の愛妾がおっても不思議ではない」


「いやまぁさすがにそこまでは……」


「だからパンツ一丁で目隠し鬼ごっこをしてパイタッチしてモミモミしていやーん!するなぞ、なーに大したことではないのじゃ」


「あ、はい……ええ、はい……」


 これはもう言い訳できないレベルで完全にガッツリ見られちゃっている……!

 くっ、目隠しが、目隠しさえなければ気が付いたのに……!


「かくいう(わらわ)とて奥方殿の大海よりも広くて深い慈悲と寛容のもと、主様(ぬしさま)の傍に侍ることを許された身。女遊びをことさらに言い立てる資格などもちあわせてはおらぬからの」


「じゃ、じゃあ許してくれる――」


「じゃが遊びほうけて、その心配する奥方殿に連絡をよこす素振りすら見えぬとは、これはいかがなものなのじゃ?」

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