第198話 先史の調べ ―パーティクル・カノン―
「は……? ええっ……!?」
驚いたのはあまりの速さに全く反応できなかったからではない。
いやそれもあるにはあるんだけれど、『剣聖』の精神安定効果を受けている俺をすら驚愕へといざなったのは――、
「跡形もなく溶けている……だと……?」
日本刀の刃の中ほどから先が、きれいさっぱり消失していたからだ――!
溶けた、としか言いようがないその現象を知覚系S級チート『龍眼』が即座に分析する。
しかし『龍眼』によって導き出された答えは、なんかもう俺の想像をはるかに超えていて――、
「荷電粒子砲……? 荷電粒子砲おぉっ!?」
俺が大きな声を上げてしまったのも仕方のないことだろう。
だって――、
「荷電粒子砲って、あの荷電粒子砲だよな? 荷電させた粒子を亜光速で打ち出して、当たった部位を原子レベルで崩壊させるっていう……」
いやでもさすがにそれは世界観がおかしすぎるだろ!?
だってこの世界、馬車で移動してるんだぞ?
「なのに兵器としての運用は技術的に不可能とまで言われた、アニメ御用達の超兵器がなんで出てくるんだよ!?」
っていうか、
「そんなん当たったら即死やん……?」
「……まさかパーテクィクル・カノン――荷電粒子砲まで知っているとは、これにはさすがの私も驚かされました。本当にあなたは何者なのですか? ただ《神滅覇王》の力を手に入れた女好きのスケベ童貞ではありませんね!?」
トワ=《スサノオ》が、巨大ロボットらしからぬコミカルな動きで驚いてみせた。
「驚くとみせかけてその実ディスってるのには、物申したいところがなくもない……!」
「本音はさておき――」
「そこは普通、冗談っていうところだよね!? ナチュラルにディスられると傷つくんだけど!?」
「あなたの内心に私は微塵も興味がありません」
「……」
うん、さっきも言ってたね……。
「そうそう、念のために言っておきますが、今のは当たらなかったのではなく当てなかったのですよ?」
「それはまた優しいこって。俺をなぶり殺しにでもしようってのか?」
「まさか。そんな無駄なことを量子AIは選択しません。私はあなたが《神滅覇王》であるという確証が欲しいのです」
「確証?」
「少なくとも今のあなたは《神滅覇王》ではありません。もはやあなたを殺すのは確定事項で時間の問題ですが、《神滅覇王》を殺す使命を帯びた私としては、できれば《神滅覇王》を殺したという確たる証拠が欲しいのですよ」
「そういうことね……」
「このまま死ぬつもりですか? それとも抗うのですか? あなたに選択の機会を与えましょう。さすがにこれを見た以上は本気にならざるを得ないとは思いますけれど」
「まぁあんなもんを見せられたらな……」
さっきのは生命の危機ってレベルじゃなかったからな。
「……俺は女の子を殴ったりってのは好きじゃないんだけどさ。でも、いっぺんガツンとやってやらないと分からないってんなら、いいだろう――」
オッケー、腹は据わったぜ。
荷電粒子砲がなんぼのもんだ?
ちょいと本気出して揉んでやるぜ―-!
そしてトワ。
お前にもう一度サクライ家でハヅキと一緒におままごとをさせてやるから、覚悟しとけよ――!
「そこまで言うなら見せてやる。最強の《神焉竜》にすら打ち勝った、常勝無敗の王者の力を! 神をも滅する最強無敗の覇王の力を! 勝ってその身に刻んでやる――!」
「『其は、神の御座を簒奪すもの――』」
「『其は、竜の帝に頭を垂らせしもの――』」
「『其は、夜天に瞬く星を堕とすもの――』」
「『其は、神をも滅す覇の道を往きて――』」
「『ただの一度も振り向かず、愚かなまでに、更なる未来を強欲し続ける――』」
「『彼の者の行く手を阻む者あらず――』」
「『ただ覇をもって道なき千里を駆け続ける――』」
「『その気高き道程をして、畏敬を込めて人は呼ぶ――』」
「『その名、尊き、《神滅覇王》――!』」
俺の中に《天照》が――膨大な力を生み出す小恒星が舞い降りた――!