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第197話 vs 最強のS級チート

「バカな、《紫電一閃(しでんいっせん)》が――」


「《紫電一閃(しでんいっせん)》、実に素晴らしい技ですね。これは完全に人の身の限界というものを超えています。ではせっかくなのでお返ししましょう。――《紫電一閃(しでんいっせん)》!」


 言って《スサノオ》がズンと力強く踏み込みながら大剣を振るった。


「――っ!?」


 それは居合でもないただの振り抜きだったし、力任せの強引さが目に余るし、技術的に言えば全くの別物だった。

 しかしその技の形は、威力は、何よりひしひしと感じる凄味ときたら、それはまさに『剣聖』最強の奥義そっくりそのままで――。


 その致命的にすぎる一撃を知覚系S級チート『龍眼』の危険予知を頼みに、考えるよりも先に動いて際どいところで回避する――!


 前髪がはらりと数本舞って、切っ先がわずかにかすった額がじんわりと熱を持った。

 流血こそしていないものの、俺の額にはうっすらと赤い筋が入っていることだろう。


「っぶねぇ……!? いやそれより、今の……! まさか《紫電一閃(しでんいっせん)》を再現したのか……!?」


 最強S級チート『剣聖』の奥義をいとも簡単にコピーする……つまり《スサノオ》もやっぱりS級を超えたSS(ダブルエス)級ってことかよ……!


「これくらい驚くほどのことではありませんよ。見切ったと言ったはずですよ? ――ですが駆動系にわずかな負荷(ストレス)を感じました。ここはあなたを驚かせたことで良しとして、使用は控えることといたしましょう」


「はっ、言わなくてもいいことをわざわざ教えてくれて助かるぜ」

 思わず飛び出たそんな俺の憎まれ口にも、


隠匿(いんとく)する必要があるほどの情報ではありませんので」

 トワ=《スサノオ》は徹頭徹尾冷徹なままでどこ吹く風だ。


「ではそろそろ第2ラウンドといきましょう――!」

 トワの宣言とともに、再び始まった対決はしかし――、


 キンキンキンキンキンキンキンキン!


「く――っ!」


 すでに『剣聖』は、その動きをコピーされたことで技術的な優位が失われ、パワーで劣る分だけ完全なスペック負けを露呈していた。

 当然、俺は防戦一方に追い込まれてしまう。


 防御と回避に重点を置いていることで、どうにかこうにかまだ打ち合えているものの、


「だめだ、まるで隙が見当たらない……! くっ、これが戦闘系最強チート『剣聖』を相手にするってことなのか……!」


 攻防一体の「最強S級チート」の前には、もはやカウンターを狙うわずかな隙すら存在しない。


 今まで《シュプリームウルフ》に《神焉竜(しんえんりゅう)》と、S級を超えるSS級を立て続けに相手にしてきたせいで、無意識のうちに過小評価してしまっていたけれど――、


「有無を言わさぬ圧倒的なまでの戦闘力……相対してよくわかった。これが『剣聖』、これが最強のS級チート……!」


 日本刀(クサナギ)を握る手に、思わず力がこもった。


「どうしたのですか? お遊びはこれくらいにして、いい加減、《神滅覇王(しんめつはおう)》を使ってはくれませんか? そうでなければとうてい、私を倒すことなどできませんよ?」


 そんな俺とは対照的に、悠然とした態度のままのトワ=《スサノオ》。


「……そう言うおまえこそなんで仕留めにこないんだ? もしかしてまだトワの心が残って――」


「まだそんな甘い世迷言を言っているのですか。《スサノオ》が目覚めた以上、トワと呼ばれた仮人格は消えたというのに。やれやれ……いいでしょう、それではあなたが《神滅覇王(しんめつはおう)》を使わざるを得なくしてあげましょう――」


 直後、ガコンと機械音がして、トワ=《スサノオ》の持つ大剣のブレード部分が、まるで砲身のように口を開いた。


 そして――、


 ――『リーン』――


 遠くで鈴の音が鳴ったような甲高い音がしたかと思うと――、


 ビュン!


 真紅の熱線が、俺のすぐそばを走り抜けたのだった――!

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