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第194話 敵って、誰だよ……

「これ、ゴーレム……」

 俺の腕の中でぎゅっと身体を縮こませながら、ハヅキが小さな声で呟いた。


「ゴーレム?」

「たぶん……おはなしで、でてくる……」


 ああそっか。

 ハヅキだってこんなの見るのは初めてだろうから、多分としか言いようがないのか。


「にしても、ゴーレムね……」

「そーせーしんわの、ふしぎな、ちからで、うごく、にんぎょう」


「うん、ゴーレム自体はなんとなく知ってるんだけど……これはその、なんていうかそういうもっさりしたイメージのよりむしろ――」


 このスタイリッシュでメカメカしい姿は、黒と青の外連味たっぷりなカラーリングは、SFに出てくる――、

「ロボット――人型の機動兵器だ!」


「まなしー、くわしー」

「小さいころガンダムとかゾイドが好きだったからな……っていうかまた創世神話かよ。これでまさかの3回目だぞ?」


 軽々しくその辺にありすぎだろ創世神話……俺は毎日のように殺人事件に遭遇してばかりいるコナン君じゃないんだよ……?


 閑話休題。


 その飛び込んできたロボットはというと、俺&ハヅキとトワを分断するかのように、間に立ちふさがっていた。

 ともあれ、まずはこのロボットをトワから引き離さないとな。


「トワ! 待ってろ、すぐに助けてやるからな!」

 俺はトワを安心させるようにと、ことさらに自信に満ち溢れた顏を作って呼びかけた――んだけど、


「必要ありません」

 返ってきたのは言い捨てるような拒絶の言葉で――。


「えっとトワ、何を言って――」


「必要ありません、と言いました」

「……え? いや、あの……?」


「私には敵の手助けなど必要ありません」

「敵って、誰だよ……」

 困惑する俺に対して、


「もちろんあなたです」

 トワは感情を失ったかのように冷静なままだった。


「それにしてもロボット――現在の文明レベルでは早すぎる概念を当たり前のように知っているとは……。《神滅覇王(しんめつはおう)》マナシロ・セーヤ、あなたはただの《神滅覇王(しんめつはおう)》ではありませんね? いったい何者なのですか?」


 『ただの《神滅覇王(しんめつはおう)》』とかいうパワーワードに突っ込みたい気持ちがなくはないんだけど、さすがに空気を読んで封印をして、


「俺のことよりもトワ、おまえこそ急にどうしたんだよ。いきなり叫びだしたかと思ったら今度は俺が敵だとか言い出してさ」


 俺は変わってしまったトワの説得を試みる――試みたものの、


「おかしい? そうですね確かにこれは可笑しいです。ちゃんちゃら可笑しいですね。へそで茶が沸いてしまいます」

「可笑しいじゃなくて、変だって意味の『おかしい』だ」


「別にどちらでも構いませんよ」

 トワときたら、けんもほろろで取りつく島もないのだった。


「おっけー、わかった。トワ、おまえ疲れてるんだよ。今からそっちに行くから動くなよ。すぐに助けてやるから――」


 話を取りまとめつつ、もう一度安心させようと俺が言った言葉はしかし、またしても、

「必要ありません」


「トワ……」

 問答無用でシャットアウトされてしまった。


「……そう、助けてもらう必要なんてこれっぽっちもないのです。だってこれは、このロボットはもう一人の私――。《神滅覇王(しんめつはおう)》を打ち倒し世界を救うための、欠かすことのできない私の半身なのですから――」


「トワ、さっきからお前、なにをわけのわからないことを言って――」

「言葉通りの意味ですよ。私はこのロボット――《スサノオ》の生体コアなのです」


「《スサノオ》……? トワが生体コア……? なんなんだよそれは!?」

 《神滅覇王(しんめつはおう)》を倒すとか、ロボットがトワの半身とか、俺にはわけがわかんねぇよ。


「《スサノオ》は世界の滅びを止めるモノ――。世界を滅びへと導く《神滅覇王(しんめつはおう)》と戦うために、先史文明が生み出した人類の最後の希望――。救世を定められた『対《神滅覇王(しんめつはおう)》決戦兵器』――」


 詠うように語りながら俺を見るトワの瞳は――真紅に染まった禍々しいその両の目は――敵意と殺意だけに支配されていて。


「先史文明が生んだ『対《神滅覇王(しんめつはおう)》決戦兵器』……だと……?」


 《神滅覇王(しんめつはおう)》が世界を滅ぼすって、いきなり急にそんなこと言われても俺には何がなんだか――。

 でも強力な敵意と殺意と害意をこれでもかとぶつけてくるトワは、俺の事情なんて構いやしない。


「さぁ《神滅覇王(しんめつはおう)》の力を継ぐ者よ。世界を滅ぼす者よ。世界の命運をかけた生存競争(ころしあい)を始めましょう――!」


 恐ろしいほどの紅の殺意に染まったトワの目が、チラリと一瞬ハヅキを見やってから――再びギョロリと俺を見た。

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