第2話 S級チート
「というわけで、改めましてこんにちは、麻奈志漏誠也さん。説明しましたように、あなたは栄えある異世界転生者に選ばれました。おめでとうございます、ぱちぱちぱちー」
アリッサが口と手によるダブル拍手で祝福してくれる。
あどけない感じがとっても可愛らしい。
「いいね、うん、最高だね。だから早く俺を異世界に転生させてくれ」
「いきなりがっつきすぎですよ、そんなに異世界転生したかったんですか? でも最初に説明があるので、まずはそれを聞いてください」
「わかった、でも手短にね、基本オールオッケーだから」
「じゃあまぁ手短に言いますと、私はあなたの転生をサポートするお仕事をしていまして、特に、あなたに与えるチートスキルについて、今から説明したいと――」
「チートスキル、キターーーーー!」
本日2度目のキタコレガッツポを決める俺である。
「もう、いちいちうるさいですね」
対してアリッサは冷静だ――というか今さらっときついこと言われたような……?
だがしかし、そんな些細なことはこの際、笑って流そうじゃないか。
だってさ、
「これがうるさくせんでいられるか。異世界転生でも最近はほら、ろくにチートも与えられずに転生させられて苦労ばっかさせられる、なんてお話も少なくないからさ。実はその辺ちょっとだけ心配だったんだよね」
「そんな! 一般人を転生させて何のチートも与えなかったら、ほとんどの場合、速攻で死んじゃうじゃないですか。沈黙のセガールさんじゃあるまいし、そんなことありえませんよ、あまりに非現実的です」
「言われてみれば、まぁそうだよな……」
仮に、俺が今のままで異世界転生したとして、何ができるとも思えない。
下手したら転生した先でも社畜をしているまである。
「にしても、実に話が分かるじゃないか。よしよし、それでそれで?」
「こほん。そしてなんと、今回。私の初めてのお仕事ということで、特別に最上位のS級チート以下、AからDまで全てのチートが解放されちゃうんです。やったね!」
「S級チート……なんと神々しい響きか……!」
「例えばですね、この戦闘系チート『剣聖』はS級チートの一つで、一たび剣を持てば戦闘で敵う相手はそれこそS級以外には存在しません。ぶっちゃけお勧めです」
「S級チート『剣聖』か……いいな、いかにもって感じだ」
「普通の異世界転生ですと、A級から一番下のD級までしか選べなくて、戦闘系ならせいぜいA級チート『剣豪』しか選べないんですけど、今回は特別出血大サービス……ぱんぱかぱーん! なんですよ!」
「いいじゃんいいじゃん、出血大サービス最高じゃん! 他にはどんなチートがあるのかな?」
「そうですね、例えばスポコン系S級チート『閉校の危機』は、24時間に1回だけ体力・気力を全回復、アーンド一時的にですが150%全ステータスを向上させることができます。これもA級チート『火事場の馬鹿力』の上位互換チートなんですよ」
「ほうほう、他には?」
「珍しいものでは、商売系S級チート『ひよこ鑑定士』とか」
「『ひよこ鑑定士』? ってあれだろ、ひよこの雄雌を区別する奴だろ? なんでそんなのがS級チートなんだよ」
「そんなの!? 『ひよこ鑑定士』、正式名称『初生ひな鑑別師』は国内外で畜産業界に多大な貢献をし、しかも毎年数人しか合格者が出ないという超高難度の資格なんですよ! あなどってもらっては困ります!」
強い口調でふんすと主張するアリッサ。
な、なにか特別な思い入れでもあるんだろうか……?
「そ、そうなんだ、悪かった……でも今の俺にはあまり必要ないかな……っていうか? で、他には?」
「そうですね……例えばこれ、ミステリ系S級チート『犯人はお前だ』。どんな難事件も一発で解決しちゃう上に、犯罪現場に遭遇しやすくなる常時発動効果がついてきます」
「それは、うん、凄いんだろうけど、それも俺的には割とどうでもいいや……名探偵の大役は、誰かほかのミステリマニアに任せるよ……と、ところでさ」
「はい?」
「その、これは別に俺が欲しいから言ってるんじゃなくて、どんなのがあるのか純粋に知的好奇心から知っておきたいことなんだけどね?」
「えっと?」
こてんと可愛らしく首をかしげるアリッサ。
その姿はあざといを通り越して、似合いすぎてて、つまり天使の可愛さだった。
俺は異世界転生したら、絶対にこういう可愛い子と仲良くなるんだ――!
「女の子にモテモテになるチートはないのかな?」
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