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第190話 ただの怠惰自慢だからね……?

 翌朝。


「うーん、こうやってみてると何の変哲もないいたって普通の幼女だよなぁ。目だって赤くないし」


「昨日の夜も拍子抜けするほど静かだったのじゃ。(わらわ)、朝までぐっすりだったのじゃ」

「今もハヅキと遊んでいるのを見ていると、ほほえましいくらいです」


 俺と《神焉竜(しんえんりゅう)》とウヅキは、ハヅキとのおままごとに興じるトワを台所からそっと見ながら対策会議をしていたんだけど、


「つまり現状は打つ手なしってってわけか」

「ま、なるようになるじゃろ。それより奥方殿。今日はわらび餅、いやサツマイモ餅じゃったか? あれを作るのじゃ、約束なのじゃ」


 しかも《神焉竜(しんえんりゅう)》ときたら、この話題に完全に飽きてるっぽいし。


「じゃあ今から作りましょうか。材料さえあれば簡単にできるので、ぱぱっと作っちゃいますね」

(わらわ)もお手伝いするのじゃ」

「いいですけど、あまりつまみ食いしちゃだめですよ?」


「思うにつまみ食いをする分だけあらかじめ多めに作っておけば、つまみ食いをしても問題ないのじゃ。備えあれば憂いなし……この真理にたどり着くとは(わらわ)はやはりSS級の中のSS級なのじゃ」


「おまえは小学生かよ……」

 『S』hougaku-『S』eiで『SS』ってか?


「でもでも、それは悪くない考えかもですね。トワもいることですし今日はいっぱい作っちゃいましょう!」

「さすがは奥方殿、話が分かるのじゃ!」


「ウヅキ、こいつはすぐに調子にのるから、あんま甘やかすなよ……?」


「むむっ、主様(ぬしさま)のその物言い。さては奥方殿を(わらわ)にとられると思うて心配になっておるのじゃな? じゃが安心するがよい、(わらわ)の一番はあくまで主様(ぬしさま)であるからの」


「あ、おう……ありがと……」


 《神焉竜(しんえんりゅう)》はさ、こういう風に当たり前のように直球で好意をぶつけてくるから、色々調子にのっても憎めないんだよな……。

 相も変わらず可愛い女の子にちょろすぎる俺なのだった。


「セーヤさんはこの後どうするんですか?」

 わらび粉――は高価なため、代用品のサツマイモ粉を取り出しながらウヅキが聞いてくる。


「トワが森で倒れてた場所の周辺を調べてみようかなと思うんだ。何か手がかりがあるかもしれないし。それで《神焉竜(しんえんりゅう)》と行こうかと思ってたんだけど――」


「すまんが(わらわ)はパスなのじゃ。今日は日差しが強くて暑いのじゃ。よって(わらわ)は大人しく奥方殿とわらび餅作りに励むのじゃよ」

「『剣聖』の奥義、《紫電一閃》を弾き返すお前の耐久力なら、初夏の日差しくらいどうってことないだろ……」


「そこはそれ、耐えられることと、だるくていやーなことは別物なのじゃよ」

「さようですか……」


 さも名言でも言ったかのように腕を組んでうんうん頷く《神焉竜(しんえんりゅう)》だけど、力説している内容ときたらただの怠惰自慢だからね……?


「うにゅ、まなしー、おでかけ?」

 そんな俺たちのところへハヅキがやってきた。


「ああうん、ちょっとな。あれ、2人でおままごとしてたんじゃなかったのか?」

「トワ、おいしゃさんごっこ、にがてって」

 ハヅキがちょっとしょんぼりした顔をする。


「苦手というか医者と妊婦という設定は、おままごとの範疇を超えているのではないかと思うのですが……」

 ハヅキに続いてとことこやってきたトワが、困惑顔をしながら極めて常識的なことを言った。


「……だね」

 どうやら幼女が股間を全開にする事案は未然に防がれたようで、俺も一安心である。

 いや当たり前だけど。


「おでかけなら、ハヅキも!」

 ハヅキがシュタっと手を挙げる。


「うーんそうだなぁ……でもそっか、そういやハヅキも正確な場所を知ってるんだよな……よし、じゃあ一緒に行くか」

「うん、いく!」


 元気いっぱいのその姿を見て、


「はじめて会った時とは見違えるくらいに、元気になったよなぁ……」

 俺はしみじみとそう思ったのだった。


「あの、トワもハヅキと一緒に行きたいです」

「うん、トワも、いっしょ!」

 そしてトワはほんとハヅキに懐いてるなぁ……。


「じゃあピクニックがてら3人で行くとするか――」


 という訳で。

 俺、ハヅキ、トワによる『トワの秘密を解き明かせ! 幼女たちと行く南方大森林ミステリーツアー!!』が幕を開けたのだった。

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