第189話 「夜の《神滅覇王》」
トワの動きを完全に封じた俺が、その体勢のまま真意を問いただす――そうとしたところで――、
「セーヤさん、今さっき大きな物音がしたんですけど、何かあったんで――はうぁあっ!!??」
ひょこっと顔を出したウヅキが、部屋の戸を開ける動作のまま、すっとんきょうな声を上げて固まった。
トワを布団に押し倒した時に大きめの音がしたから、それを確認にきたんだろう。
きたんだろうけど――、
「あ、あああああああの!? セーヤさんは、いったい今なにを……!?」
「なにってそりゃ――」
俺は侵入者を物の数秒で返り討ちにして捕まえた、超クールでグレイトにイカした事の顛末を説明しようと、改めて今の状況を確認したんだけど、
「まぁそのなんていうの……?」
俺はトワを布団の上で、後ろから覆いかぶさるように組み敷いていて。
トワの白いワンピースはスカート部分がぺろーんと大きく捲れていて。
あろうことか俺の股間はトワのお尻にガッツリ押し付けられていて。
しかも昨日は少し暑かったために俺は上半身裸のオマケつきで。
……誰がどう見てもお楽しみの真っ最中です、ありがとうございました。
「こんな小さな子でも女の子なら出会ったその日にいたしちゃうなんて……」
「いやいやいやいや、いたさないから! 俺は大きいおっぱいの女の子が好きだから!」
むしろウヅキのおっぱいとか大好きです!(チラ見
「胸のサイズを差し引いても、出会ったその日にいたしちゃうくらいにとても好みだったんですね……」
「うん……その発想はなかったかな……」
「最近ハヅキとも仲良しですし、サーシャともいい感じですもんね……やっぱりセーヤさんは小さく幼い身体つきが好み……」
「いやあの――」
俺はウヅキのおっぱいがだいだいだいだい大好きだ――!
ウヅキの誤解を解こうと深夜のハイテンションでそう言いかけた時――、
「なんじゃ、夜も深いと言うのに騒々しいのぅ……妾、ちょお眠いのに起きてしまったのじゃ……幸い妹君はまだ寝ておるから、起きてしまわんようにもう少し静かにしたほうがいいと思うのじゃ……」
めっちゃ眠くてかったるそうな《神焉竜》が、ウヅキに続いて俺の部屋へとやってきた。
そしてトワを組み伏せる俺と、ちょっとしょんぼりなウヅキを見比べると、
「年齢的に母体に不安がありそうなのじゃ。避妊はしておいたほうがいいのじゃ」
事実誤認も甚だしい、全くありがたくないお言葉を投げかけてくれやがったのだった。
「ちょうどいいから2人まとめて説明するよ。実はかくかくしかじかでね――」
…………
……
「ふむふむ、つまりはトワが寝込みを襲ってきて、それに主様が対処したというわけなのじゃな」
「すみませんセーヤさん。わたしてっきりセーヤさんがトワとしっぽり夜の《神滅覇王》をお楽しみ中だとばかり……」
しょんぼりさんなウヅキに、
「いやいや分かってくれたらいいんだよ、うん。大切なのは最後は分かりあえたことだから」
俺はさらっと流してみせる。
ここぞとばかりに紳士な大人の男を演出する俺だった。
でも夜の《神滅覇王》って……ウヅキのむっつり語彙力はなかなかのものだね……?
「それにしても目が赤くなったあれはなんだったんだ……?」
チラリとトワを見やると、今はぐっすりと死んだように眠ってしまっていた。
突如としてまるで意識を失ったかのように、急にぐったりしてしまったのだ。
「ふむ、これでは聞きだせんの。よかろう、今宵は妾がトワの面倒を見るのじゃ」
「いいのか?」
「なに、こんなちびっ子の一人や二人、多少おいたをしようが妾ならなんとでもなるのじゃ。いちいち気にするでないのじゃ」
言って《神焉竜》はぐったりとしたままのトワをひょいっと抱きかかると、余裕綽々で大あくびをかましながら、割り当てられた自分の部屋へと戻っていった。
まるで我が家のようにサクライ家に住まう、とっても適応力の高いドラゴンだった。