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第188話 布団乾燥機……?

 その夜。

 平和で理想的な、何より充実した一日を終えた俺は、サクライ家の自室にてぐっすりと眠りこけていた。


「むにゃ、もうおっぱい食べられないよ……にゅふふ……」


 ――と、

 トスン、と部屋の戸が開く音がして、誰かが俺の部屋へと入ってきた――。

 謎の侵入者は、寝言以外は静かに布団に横たわったままの俺の枕元に立つと、


「――」


 わずかのためらいもなく両手で持った包丁を振り上げると、問答無用で俺の心臓めがけて突き立てた――!


 ――が、しかし。


「どういうつもりかは知らないが――」


 既に一連の行動全てを把握・認識していた俺は、それを苦もなく回避すると跳ね起きた――!


「悪いけどそんな芸のない不意打ちは、俺にはきかないぜ?」


 そして一瞬で侵入者の背後に回り込むと、手首を後ろ手に捻りあげ、


 ドン――と、今まで俺が寝ていた布団へと押し倒し、後ろから馬乗りになって無力化したのだった。


「これっていわゆる一つの暗殺ってやつ? やれやれ……もしかしてこれが有名税ってやつなのかな? でもま、なんにせよ相手が悪かったな」


 なんせこの世界の俺は、全チートフル装備で無敵だからな。


 今も知覚系S級チート『龍眼』が危険を察知し、まずは気持ちよく起床できる日常系A級チート『おはよう朝ごはん』と連動して、俺を瞬時に完全覚醒状態へと導いた。


 さらに布団膨らませ系A級チート『布団乾燥機』によって、まるで人が寝ているかのように布団を膨らませて侵入者を欺いた俺は、布団の端に身を寄せた状態から、わずかに気取られることもなくゆうゆうと脱出して反撃したのだった。


 しかしあれだな。

「アホな寝言を言ってる自分を『龍眼』を通して客観的に見るってのは、自分が二人いたというか、幽体離脱でもしているみたいで不思議な感覚だったな……」


 あと布団膨らませ系チートってのはなんなの?

 いったい誰が何のために開発したの?


 だって異世界転生局からチートを付与されるにあたって、わざわざこんなチートを選択する人はいないでしょ?

 仮に選んだとして、その人の目的はなに?

 まず間違いなくノリで選んじゃって、激しく後悔するパターンだよね?


 いやまぁ今回こうやって役に立ってしまった以上、あまり文句は言えないんだけどさ……。


 ま、それはさておき。


「あぅ――っ」


 布団に組み伏せた侵入者が俺の拘束から逃れようと身をよじったのを、後ろ手に捻りあげた腕をさらにきつく絞り上げることで、俺はいとも簡単に対処してみせた。


「無駄だ。俺の寝技は世界最強だからな」

 捕縛系S級チート『逮捕しちゃうぞ』の拘束から逃れられるのは、普通の人間にはまず不可能だ。


 そしてその体勢を維持したままで俺は詰問する。


「下手な言い逃れはするなよ? 部屋に入ってきたときには既に、お前の行動は全て把握していたんだからな? で、これは何のつもりなんだ。理由を聞かせてもらおうか――トワ?」


 俺は組み伏せている小柄な幼女。

 落ち着いたエメラルドグリーンだったはずの目を、今は爛々と不気味な真紅に輝かせているトワに、そう尋ねたのだった――。

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